食べられることが伝わるため「試食部」に
藤崎:どんな企業でも「ブランドのファンを増やす」、「エンゲージメントを高める」を目標にします。しかし、具体的にどうやってエンゲージメントを高めて、効果を測定するのか、なかなか経営層の理解を得られないことが多いようです。その点、私が大洞さんの判断が素晴らしいと思ったのは、プログラムを始めるにあたり新商品に絞ったことです。
大洞:新商品だけに絞れば目標数値が立てやすいですし、広告費換算的な計算もできます。また、新商品の販売動向は、前回、前々回に販売した新商品と比較できますから、社内で検討する数字が取りやすいんですね。
販促としてのリターンが実感しやすいということも、アンバサダープログラムに踏み切りやすかった理由としてありますね。
藤崎:新しくアンバサダープログラムを始める際に新商品のクチコミに絞るというのは、入り口としてはとてもよい選択だと思います。
大洞:これで「クチコミって販売にとても大切なんだ」とか、「とらえどころがないソーシャルだけれど、きちんと形になっていく」ということが実証できれば、ソーシャルの取り組みを、社内でさらに広げやすくなるかなということもありました。
藤崎:丸亀製麺さんのアンバサダープログラムは「試食部」という名称ですが、これは最初から決めていたのですか?
大洞:クチコミしてもらうための試食という意図は当然ありますが、最初からこの名称だったわけではありません。最初はいろいろ考えていて、「丸亀製麺宣伝部」とか「宣伝部長募集」とか。でも新商品の試食をやるなら、「試食部」がわかりやすいのではないかと。
藤崎:ストレートで、話が早いですよね。
大洞:ゆくゆく「私、丸亀試食部なんだよね」ってアンバサダーの方が言ったときに「え?なにそれ?」というふうなフックにもなって欲しいということもありました。あと、しっかり食べれそうな名前じゃないですか(笑)。
藤崎:確かにたくさん食べられそうですね。ファンにとっては新商品を真っ先に試食できるというのは重要なフックです。それに商品開発にも関われそうなイメージもありますね。
大洞:はい。ネタを探しているブロガーの方にもちょうどいいかなと。そこで企画を社長に話したところ「やってみなさい」ということで、試食部用のロゴデザインもポップで親しみやすいものを作り、取り組むことにしました。
藤崎:アンバサダープログラムに社長は好意的だったのですか。
大洞:いえ、必ずしもそういうわけではありません。おそらく多くの企業の場合と同様に「本当のところはよく分からない」と思っているかもしれません。
ただ丸亀製麺には、熱烈な支持をしてくださるファンの方がいるので、その存在をたびたび社長に報告していました。
例えば熱烈なファンの方で、兵庫県の全店舗を回ってはレビューブログを書いている人もいます。そういう方々がいることは、社長に共有していたため、「面白そうだから、実施してもいいんじゃない」という話になりました。規模的にも予算を通すまでもないということもあったと思います。
今後も今すぐには運用人員や大きな予算を投下することも考えていません。できる範囲で頑張っていくつもりです。
藤崎:まさに「やってみなはれ」ということになったのですね。普段から大洞さんが社長とのコミュニケーションを大事にしていることを感じるエピソードです。