消費者の“承認欲求”とどう向き合うのか? — 住友生命保険、日本ケロッグ、BAKEのブランド戦略

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研究会 参加者
・住友生命保険 ブランドコミュニケーション部長 藤本 宏樹 氏

・日本ケロッグ 執行役員マーケティング本部長 大谷 弘子 氏

・BAKE マーケティング統括部 部長 黄 珊珊 氏

写真左から住友生命保険 藤本宏樹氏、BAKE 黄珊珊氏、JAPAN CMO CLUB加藤希尊氏、日本ケロッグ 大谷弘子氏。

7月25日、17回目となるJAPAN CMO CLUBの研究会が開催された。2014年11月に設立され、間もなく3周年を迎えるJAPAN CMO CLUBだが、その活動は定例の研究会のみならず、広がり続けている。

JAPAN CMO CLUBのFounderである加藤希尊氏は研究会の冒頭で最近のCLUBの活動について写真を交えながら紹介。

JAPAN CMO CLUB
加藤希尊氏

「日本のマーケターの集合知をつくることを目的に設立したJAPAN CMO CLUBも参加するマーケターが70名を超え、参加者同士の交流が活発に生まれている。最近はマーケターが互いの企業を訪問し、それぞれのブランドを実際に体験しあう分科会活動も盛んに開催されている」と話した。

背後にあるストーリーや技術力についてマーケターから直接、説明を受けながらのブランド体験は、参加者にインスピレーションを与えるようだ。

生誕ストーリーの中にブランドの差別化要素がある

JAPAN CMO CLUBの研究会ではいつもディスカッションに先立ち、各社の事業内容や成り立ちについても説明してもらっている。日頃から慣れ親しんでいるブランドでも、初めて耳にする歴史やストーリーが披露されることも多く、毎回参加者同士の質問が飛び交う時間だ。

例えば「オールブラン」「グラノラ」などで有名な日本ケロッグも、研究会でこれまで参加者が知らなかった歴史を披露した企業だ。「米国でケロッグが誕生したのは110年以上も前。保養施設を運営していたケロッグ兄弟が、穀類の栄養をまるごと美味しく食べられる食品を作れないかと試行錯誤する中で、コーンフレークが生まれ、その後の各種シリアルの展開に至っている」(大谷氏)。

店舗にいつも長い行列ができる焼きた立てチーズタルトの「BAKE CHEESE TART」やシュークリームの「クロッカンシューザクザク」、写真入りのケーキをスマホ経由で簡単に注文できる「ピクトケーキPICTCAKE」など複数ブランドを展開するBAKE.Incも、一般にはあまり知られていないが実は北海道の老舗菓子店「きのとや」の経営者を父に持つ長沼氏が立ち上げた会社だ。

BAKE ファンクション本部 マーケティング統括部 部長
黄 珊珊 氏

「洋菓子は比較的、コンサバティブな業界だったことから、長沼が『お菓子を、進化させる』というミッションを掲げ、BAKEを立ち上げた。北海道産の1ブランド1商品戦略で生まれた利益を、より良質な原材料やにこだわる他パッケージや店舗デザイン、マーケティング施策に投資をすることで、お店に来る前から実際に商品を口にするところまでお客さまがワクワクできる体験を届けていきたい。、商品開発に際しては、きのとやの協力も得ている」(黄氏)。

1ブランド1商品戦略で現在、8ブランドを展開。さらに、それぞれのブランドを独立させ、背後にあるコーポレートブランドの存在は積極的に見せてこなかったというBAKEだが、ブランドの背後にあるBAKEという企業が持つDNAを伝えていくことも必要ではないか、との考えから今後はコーポレートとしての発信も強化する方針だという。

プロダクトブランドの背後にある企業が抱く理念や志、そして歴史をいかに伝えることができるか。大谷氏は「付加価値の高い商品で、コモディティ化や価格競争に巻き込まれるのを避ける戦略をとっているが、若い人たちは可処分所得が限られるので、価格に影響されることもある。優れた栄養は身体だけでなく心まで健やかにするという信念、100年以上におよぶ開発で培った他のメーカーには真似できない技術、質の高い栄養を理解してもらえれば、高付加価値の理由も理解してもらえるのではないか」と話し、コモディティ時代のマーケティングにおいてコーポレートブランディングが果たす役割にも言及した。

今年110周年を迎える住友生命保険でも、改めてコーポレートブランディングの重要性を認識し、研究会に参加した藤本氏が率いるブランドコミュニケーション部がCSVも含めたコミュニケーション施策の企画・実施を担っている。

「生命保険は差別化が難しい商材。ブランド戦略を考える上でヒントになったのが、昭和40年代に当時の社長が生命保険の役割について新聞記者から聞かれて答えた『悲しみと共に貧しさが訪れないように』という言葉」(藤本氏)。

藤本氏は企業の成り立ちやこれまでの歴史、お客さまを対象にした調査などから、人によるサービスの部分が同社にとっての強みであり、他社にはない差別化要素という考えに至ったという。現在は複数の部門にまたがる顧客接点を統合した、より魅力的な顧客体験をいかに実現するかに取り組んでいる。

そのなかでも「デジタルの取り組みにも力を入れているが、加入いただくのはオフラインの接点。デジタルの施策が、最後の加入にどうつながっているのか、解明が難しく今後の課題」と話す。



ディスカッションの合間には、各自で持ち寄ってもらった各社のブランドを体験できる商品、グッズを紹介し合い、参加者同士の理解を深めている。

次ページ 「お客さまの発信が新しい顧客を呼び込む」へ続く

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