【前回の記事】「ネット動画の炎上騒動が相次いでいるのは、なぜだろうか?」はこちら
ソーシャルメディアの普及による、企業にとって頭の痛い悩みとして、炎上騒動と共にあげられるのが「ネガティブなクチコミ」でしょう。
「価格.com」や「食べログ」のような口コミ情報サイトに、あることないことを好き勝手に書かれてしまったり、自社にとって根拠の薄い批判的な記事が検索結果の上位に表示されてしまったり、あるいはソーシャルメディアで誤解が拡散してしまったり、様々なネガティブ投稿で困っているという企業は多数いるでしょう。
そうしたネガティブ投稿をお金を払うことで削除できる、という提案を受けたら、喜んでお金を支払ってしまうという企業も少なくないはずです。
しかし実は、そうしたネガティブ投稿を無理矢理、削除しようとする姿勢自体が、悪評の拡散につながってしまうという事例がネットの歴史上に複数存在します。
象徴的なのが、この一週間ネット上で話題をよんでいる、求人サービス運営の「Wantedly(ウォンテッドリー)」の騒動でしょう。Wantedlyは今回、DMCA申請という著作権違反から著作権者を守る仕組みを悪用したとして問題視されているのです。
参考:DMCA悪用はなぜ問題なのか ウォンテッドリー社の悪評隠蔽事例
DMCA申請を悪用することがなぜ問題なのかについては、上記の辻さんのブログ記事を参考にしていただければと思います。
アドタイ読者の方々にとってポイントとなるのは、Wantedlyがネット上から記事を削除する行為を行ったことで、当初のネガティブ記事よりもはるかに大きな批判を受ける結果に陥っている点です。
もともと、Wantedlyが注目されるきっかけとなったのは、8月10日に東京証券取引所マザーズ市場に新規上場を申請し承認され、その際に公開したデータを元に様々な分析がされたことでした。その中でひときわ注目されたのが、8月16日に公開された「Wantedly(ウォンテッドリー)のIPOがいろいろ凄いので考察」という記事。
WantedlyはビジネスSNS的な求人サービスということで、ネット界隈でも利用者が多く、女性最年少上場という話題性もあって、そのIPOを面白おかしくネタにしたこの記事は多くのアクセスを集めることになります。
私自身も当日に読みましたが、よくある上場時のネガティブ反応の一つだなと受け止めていました。一方で、下記のようにこの記事に対する論理的な反論も一部でされていて、議論が起こっていたのは事実でしょう。
起点となった記事は1週間で10万PVを超えたようですから、ネット業界のビジネスネタとしては大ヒット記事と言えますが、実際にはあくまで一部の業界ネタであり、その後は当然ながら徐々に忘れられていたと言えると思います。
しかし8月24日に、はてな匿名ダイアリーに、この記事が出たことで流れが一気に変わります。
参考:Wantedlyにツイートを消された(かもしれない)話
これを起点に、自分も投稿を消されたという人たちが次々に確認され、ブログだけでなく様々なメディアが取り上げる一大騒動へと発展。
Wantedly側は、謝罪リリースを出したものの、その中でもあくまで今回のDMCA申請は悪評隠しではなく著作権違反に対する対応だと主張していたことで、さらに炎上が拡大しています。
もちろん、実際にどういう趣旨でWantedlyがDMCA申請を利用したかについては憶測の域を出ませんが、これまで他の画像に対して同様の対応をしていないなどの状況証拠との乖離から、Wantedly側の説明が不十分なのは明らかな状況です。
今後のWantedly側の対応次第で、この騒動がどういう形で記憶されるかは変わりますが、今回の騒動はネット上で「ストライサンド効果」と呼ばれている「消すと増える」典型的な事例と言えます。すでにWikipediaにも今回の事例が追記されているようです。