Wantedly騒動に学ぶ、ネットの悪評を削除するリスク

クチコミ削除は自称SEO会社の常套手段

アドタイ読者の方々に今回の騒動から学んでいただきたいのは、ネット上からネガティブ情報を無理矢理に削除しようとする行為は、大きなリスクがあるという点です。

今回のWantedlyが自らDMCA申請という選択を思いついたのか、支援会社のアドバイスだったのかは全く分かりませんが、実はこうした手法によるネガティブクチコミの削除の提案はいわゆる自称SEO会社によって良く行われているようです。

自社の製品やサービスについての悪評に悩まされている担当者が、その悪評をネットから削除できるとしてDMCA申請の手法を提案されたら、思わずお金を払ってしまうというケースは容易に想像されます。

特に従来のマスメディアの環境に慣れた担当者ほど、ネットでのいわれない悪評やネガティブな記事を見つけてしまうと、なんとか削除できないかと悩んでしまう傾向が強いように感じます。

ぜひ意識して頂きたいのは、下記の3つのポイントです。

  1. 100%ポジティブな投稿しかされないなんてありえない
  2. 一般人のクチコミ一つ一つにはそれほど大きな影響力は無い
  3. 無理矢理削除しようとする行為自体が逆に悪評の拡散につながる

1.100%ポジティブな投稿しかされないなんてありえない

ネット上では、常識的なマスメディアであれば書かないような憶測記事も平気で書かれますし、心ない言葉遣いのケースも多いでしょう。

マスメディアであればある程度話せば分かるケースも多いかもしれませんが、ネットでは匿名の発言も多いですし、誤解に基づくネガティブ発言も多く、企業担当者側からすると手を焼くのは間違いありません。

ただ日常会話で考えてみていただければ、そもそも100%ポジティブな会話というのはありえないことが分かるはずです。自分の会社についてでも、愚痴も言えば上司の悪口も言うでしょう。

久しぶりに同窓会で出会った同級生に自分の会社の話をしたら、褒められることもあれば、ここぞとばかりに文句を言われることもあるはずです。

そもそもネットユーザーの会話において、全てをポジティブにできるということ自体が幻想なのです。

2.一般人のクチコミ一つひとつにはそれほど大きな影響力は無い

しかも、通常は一般人のネガティブなクチコミというのは、一つ一つではそれほど大きな影響力は持ちません。

実は真面目な企業担当者ほど、ネット検索やソーシャルメディアの傾聴で発見したネガティブ投稿に、傷つくことが多いようです。

ただ、実は極端なネガティブ発言をする人の周辺には、そういう人が集まっていますから、そういった投稿が実は自社の顧客には全く届いてないというケースも多々あります。そもそもツイッターの投稿は、1日も過ぎればほとんどの投稿は全く見られないと言われていますから、今回のように過去の投稿をわざわざ削除する必要性はほとんどありません。

また、ネガティブな発言をしているのが、自社の顧客なのか、第三者の憶測ややっかみなのかには特に注目する必要があります。第三者の憶測ややっかみであれば、反応するのではなくスルーするのが正解というケースが実は多々あるのです。

次ページ 「ネガティブな指摘を受けた根を根絶すべき」へ続く

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徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)
徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)

徳力基彦(とくりき・もとひこ)NTT等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。書籍「アンバサダーマーケティング」においては解説を担当した。

徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)

徳力基彦(とくりき・もとひこ)NTT等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。書籍「アンバサダーマーケティング」においては解説を担当した。

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