うなぎパイの春華堂 — ブランドの理解とデジタル領域の知識を兼ね備えたECチーム

ECでの売上増の背景にある、社内への啓蒙活動と情報収集

2014年にリニューアルした、ブランドサイト(左)とオンラインショップ(右)。

Webサイトは、顧客とブランドとの重要な接点であると同時に、商品を販売する場でもある。オンラインショップのリニューアル前後で、売上は倍に伸びているという。

だが実は、春華堂の主力商品である「うなぎパイ」は、オンラインショップで販売していない。職人が手づくりしている繊細なものなので、輸送時に割れてしまう可能性が高いからだ。主力商品なしでも、伸びが見られるのは「広報活動や催事といった他部署との連携や、店舗スタッフによるこまめなSNS更新があってこそ」だと池田氏は力を込める。

「うなぎパイ」の包装箱に同梱されている漫画「職人くんの日々」は、Webサイトでも閲覧できる。うなぎパイの製造法をイラストでわかりやすく解説するもので、作者の鈴木のりたけ氏は静岡県浜松市生まれの絵本作家だ。

例えば、「うなぎパイ」の包装箱の中にしおりとして同梱されている漫画「職人くんの日々」。これは別部署で制作しているツールだが、Webサイトでも見られるようにした。実店舗でどんな取り組みが行われているのかを常にチェックし、Webサイトにも活かせそうなものは、コンテンツに加えるよう意識しているという。

逆にWebサイトで使用しているビジュアルを店舗側に共有することもある。このような連携を実現するにあたっては、社内での啓蒙活動が功を奏した。池田氏は、全体会議などの場で、取り組みの報告などを行いながら、認知、そして理解へとつなげていった。

春華堂のような老舗企業においては、新しい表情を打ち出しながらも、受け継がれてきたブランドイメージを守ることも重要になってくる。ECチームが「春華堂らしさ」を判断する際には、先輩社員がまとめたリブランディングの企画書や商品カタログを参考にしている。新卒で入社した大石氏は「新人研修で学んだ会社や商品の歴史」が役立っていると言い、山口氏は「職人たちは春華堂が本当に好きで、菓子づくりについて楽しそうに説明してくれる。この魅力をきちんと伝えたい」と意気込む。

これからの課題は、クオリティを保ちながら、コンテンツ配信を継続することだ。「生活者のECに対する期待感が高まる中、担当者が一人だと過度に重圧がかかります。コンテンツの配信を継続していくには、それを実現するチーム編成が重要です」と河野氏は指摘する。

五穀を使った菓子を展開するブランド「五穀屋」のサイト内コンテンツ「五のことづて」。担当者の大石氏は「雑穀エキスパート」の資格を取得し、読みごたえのあるコンテンツづくりに余念がない。

現在、ECチームは経営管理室に所属しているが、いずれは経営「企画」室となり、実店舗と連携しながらECサイトを起点とした新企画や情報配信を行う部署へと成長することを目指している。

ブランディングを担う組織が安定して稼働できるようになったからこそ、次のステップが見定められるようになった。長い歴史の中で、常に挑戦を続けてきた春華堂。デジタル時代にあっても変わらぬ姿勢で、顧客のもとへ新たな商品や企画を届けていきたい考えだ。


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