元「C CHANNEL」編集長のやまざきひとみさんにインタビュー
7月にこんな記事を書きました。
「動画広告はバズればいいの?企業はこれからネットで「テレビ」になればいい」
この記事の3ページ目に「○○○テレビ」をやればいい、と書きました。単発でバズを狙うのではなく、定期的に「番組」を配信すればいい。番組がブランドに関係あるテーマなら、徐々に自然とそのテーマに興味がある人が集まってくるはずだ。
これは各プラットフォームが、ライブ配信にチカラを入れはじめたことを受けて考えたことです。理屈はそうなんだけど、具体的にはどうすればいいのかなあ。そこはわからずに書いていました。
そしたら、この具体化している人がいました!
去年の7月、やはりこの連載でこんな記事を書きました。
「動画広告はうまく置かないとユーザーを不愉快にさせる。そこをクリアしたC CHANNELの発明」
この時、「C CHANNEL」編集長として取材に応じてくれたのが、やまざきひとみさん。彼女はその後、「C CHANNEL」編集長の立場を離れて独自の活動をしていたのですが、この8月に新会社を設立しました。
これを読むと、「おお!これこそ○○○テレビが可能になる仕組みでは」と思い、さっそく新オフィスに遊びに行ってみました。久しぶりにお会いしたやまざきさんは、相変わらず生き生きとしていました。
イントロダクションが何をする会社か、ざっと説明すると、マルチプラットフォームでライブ映像配信を行う会社です。そのための最低限の設備と機材を整えて、ノウハウを積み重ねています。
マルチプラットフォームでのライブ配信、とだけ書いてもピンと来ない人が多いでしょう。でも、ライブ配信をやったことある人は「どうやるのかな?」と感じるでしょう。
Facebook LIVEで配信しながらYouTube LiveでもTwitterのPeriscopeでも同じ映像を配信するって具体的にどうやったらいいのか、わかる人は少ないでしょう。あるいは、非常に大袈裟なシステムを組もうとしてしまうかもしれない。
それを可能にするアプリケーションがあるのだそうです。何回か試して、安定した方法がつかめてきたとのこと。そういう具体的なことが、大事だと思います。絶対に何度かやってみないと、つかめないノウハウがあるわけです。やまざきさんによれば、「WiFiがあれば、どこでもライブ配信できちゃいますね」なのだそうです。
それから、動画が「タテかヨコか」。これもケースバイケースだそうで、ただタテが自然になりつつある。既存の制作会社だと、タテだと撮り方がわからないというところも多く、タテでの配信について相談されるケースもよくあるそうです。
いま若い人たちはセルフ配信に非常に意欲的です。Instagramだって、もはやストーリーと称したライブ配信が大変な盛り上がり。そういう若者たちには、試みとしてもっとクオリティ高く配信する手伝いをしてあげてるそうです。それによってわかってきたノウハウを、企業からの依頼に生かしている。だからこそ、最先端のノウハウと感覚を企業ニーズに生かせるわけです。
「C CHANNEL」の時は、音がなくても理解できるようにテロップをうまく使っていましたが、ライブ配信では逆に、音を聞いてくれている前提でつくるそうです。だから逆に不要にテロップは入れないようにしている。対談形式や、テレビ番組っぽいのもトライしていきたいとのこと。
我々は、ネットで広告映像を展開しようという時、テレビCMの延長で考えていた気がします。ネットならテレビCM的な映像を長尺でも流せる。でも強烈じゃないと見てくれない。そう考えちゃって行き着いた先が、話題になる時は炎上動画、ということになっています。
あるいは、テレビCMの素材をそのまま流せばいい、と新しい動画広告枠を開発して、それが時に強引すぎて不快になってもいます。
テレビCMの仕組みがうまく行っていたので、それをネットに持ち込もうという考え方で、実際にはそこだけではうまくいかないわけです。
テレビCMをネットに持ち込むのではなく、テレビをネットに持ち込むべきなのではないか?テレビ広告の仕組みは、番組とセットでCMを流すことでうまくいきました。だったらテレビCMをネットに、ではなく、テレビをそのままネットに持ち込んで、その中で広告の仕組みを考えるべきではないか?
ネットの中でのテレビ。そのひとつの解釈がライブ配信なのだと私は思うのです。実はテレビ番組って、「何かについて誰かがしゃべる」構造です。ドラマやネタ番組以外はほとんどそうなってます。その領域の開拓が、実は今後のネットの映像メディアにとって重要になりそう。やまざきさんにも、それと近い直感があって、イントロダクション社を立ち上げたのではないかと、お話を聞いて感じました。
バズ狙いの動画広告を卒業した進路としての、ライブ配信。大いにありだと思いますが、いかがでしょうか?
境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)
1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Borer 」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書「拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―」。株式会社エム・データ顧問研究員としても活動中。お問合せや最新情報などはこちら。