AIを広告文脈で活用する3つの切り口:キーワードは「新しい体験」

執筆者
・博報堂アイ・スタジオ クリエイティブテクノロジー部部長 兼 CREATIVE AI研究所所長 北島知司氏
・博報堂アイ・スタジオ システム開発部 副部長 川添昌彦氏

技術革新が目覚ましく、さまざまな領域で活用可能性が探られている人工知能(AI)。広告・コミュニケーション施策においても、徐々に活用されるようになってきました。「人間の仕事を奪うのでは」とネガティブな文脈でとらえられることも少なくないAIですが、上手く活用すれば、人間の発想や思考、判断などをエンパワーしてくれる存在であることも知られつつあります。

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広告・コミュニケーションの企画制作の現場におけるAI活用を進めている、電通、博報堂アイ・スタジオ、マッキャンワールドグループの3社が、各社の取り組み・研究の今をレポートするとともに、「AIはクリエイティブにどう役に立つの?」という疑問に答えます。

若手人材の発掘・育成を通じて広告クリエイティブの発展を願う、「宣伝会議賞」の特別企画です。

今後の更新予定(全6回)
第1回:博報堂アイ・スタジオ①
第2回:マッキャンエリクソン①
第3回:電通①
第4回:博報堂アイ・スタジオ②
第5回:マッキャンエリクソン②
第6回:電通②


人工知能(AI)の要素とクリエイティブアイデアを掛け合わせることで、新しい広告表現の創造を研究している博報堂アイ・スタジオのCREATIVE AI研究所。

本研究所の北島知司と川添昌彦が、世の中の事例、自社の実績について紹介するとともに、昨今注目を集める「広告クリエイティブにおけるAIの活用と今後の可能性」について探っていきたい。

今回は、人工知能が広告クリエイティブをどう変化させているのか、その活用方法を体系立てて解説した上で、新しい表現の創出と今後の活用可能性について触れていく。

活用のカギは、AIの役割を限定すること

「AlphaGo」「The Next Rembrandt」など、テクノロジージャイアントと呼ばれる企業が華々しい実績を積み上げたことにより、人工知能の可能性が大きく前進している。また、その開発手法が公開・共有されていることから、幅広い分野で人工知能技術の取り込みが模索できる時代を迎えている。

バロック絵画の代表的な画家・レンブラントの作風をAIの機械学習によって再現したプロジェクト「The Next Rembrandt」。本プロジェクトは、オランダの総合金融機関 INGグループが出資したもの。オランダのマウリッツハイス美術館とレンブラントハイス美術館のチームが、デルフト工科大学、マイクロソフトと協力して制作した。(編集部補足資料)

広告・マーケティング、ブランディングの分野では、数年来ビッグデータを活用したデジタルマーケティングの取り組みが進んでおり、企業が持つデータ資産を集約し、価値を生み出すという考え方が広く認識されている。そのため、広告業界は人工知能活用に対しても着手しやすい立ち位置と言える。

「人工知能を広告に使う」と言っても、いきなり人間の能力を超えた知能・才能・品質を生み出すという挑戦に向かうというわけではなく、従来の広告業界が培ってきた手法、クリエイティブ発想の一部に人工知能の強みを取り込むことで、少しずつ新しい体験を織り込んでいく、という取り組み方が主流のようだ。

具体的には、テキストマイニング、画像認識・画像合成など機械学習の手法を用いた従来のクリエイティブに対し、最新のコグニティブサービスやディープラーニングを加えることで、体験の質が変わる、というものだ。

次ページ 「事例1:ドラマの主人公の成長とチャットボットの成長をリンクさせる」へ続く

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