事例1:ドラマの主人公の成長とチャットボットの成長をリンクさせる
事例をいくつか見ていこう。身近な事例として、テレビドラマなどのプロモーションでチャットボットを活用しているものがある。
人工知能チャットボットといえば、「ユーザーとの会話経験を積むことで成長する」という一般的な共通認識があるが、その成長要素を上手く利用している。
例えば、ドラマの作中において、出来事・出会いを通した主人公の成長に合わせ、人工知能チャットボットもまた、ドラマの展開に合わせるように会話が少しずつ成長していく。ドラマの脚本をベースにした会話も、徐々に増えていく。
チャットボットの成長を体感することが、主人公やドラマの理解につながり、ドラマのプロモーションにつながっている。
事例2:診断系アプリに新たな価値を付加
次に、いわゆる「診断系アプリ」にディープラーニングを取り入れた事例を取り上げてみる。
残念ながら2016年のプロモーション終了に伴いクローズしてしまったようだが、化粧品メーカーがプロモーションで診断アプリを手がけていた。このアプリケーションは、ユーザーのTwitterもしくはFacebookへの投稿記事を収集、エゴグラム分析して性格をタイプ別に分類する。
診断系アプリは広告として確立された手法だが、ディープラーニングを導入することで、データに対する細やかな観察、意外な推論が生まれ、「人工知能による分析」という未知なる期待感も感じさせる。独特の世界観を構築するため、最新のWeb技術を使い、細やかなグラフィカル表現をつくり込むことにも力を割いている。
従来のエゴグラム分析やグラフィカル表現に対し、人工知能の働きを組み合わせることで、新たな意味や体験、広告表現を創出した事例といえる。
いずれも、人工知能が果たす役割を上手く限定することで、企画として成り立つよう制御している。また、「人工知能」という言葉に対する生活者の期待感を喚起することで、広告クリエイティブとしてのバランスの取れた事例になっている。