『シン・ゴジラ』制作秘話を大公開!
澤本:『シン・ゴジラ』の話をしたいんですが、僕らはCMをつくるときにCMのペースでセリフを書くじゃないですか。そのペースで映画の脚本を書くと、「こんなの時間に入らないよ」と言われるんです。書いてもっていくと、「こういうセリフを書いてくるから、CMのやつはダメなんだ」みたいな感じで(笑)。
『シン・ゴジラ』はみなさんのしゃべるテンポがよくて、セリフがいっぱい書いてあったと思うんですけど、よく撮れたなと思って。「こんなセリフの量があったら2時間超えちゃうよ」など、そういうやり取りはなかったんですか?
長谷川:あったはずですね。僕も台本を読んで、あまりの分厚さと、よくわからない政治用語、軍事用語がいっぱいあって、これどういう風にやっていくんだろうと思いました。恐らく庵野さんの世界観からしたら、相当のスピードでいかないと2時間には収まらないだろうから、早口でやっていくようにするんじゃないかと思いましたけどね。
澤本:読んだ段階で、早口で読むと想像がついていたと?
長谷川:そうですね。想像は最初についていたんですけど、本読み合わせの顔合わせのときが今までと違う読み合わせで。
澤本:どう違うんですか?
長谷川:すごいんですよ。東宝のスタジオに長テーブルがたくさん並んでいて、登場人物300人ぐらいがみんな座って、1人ひとりの前にマイクがあるんです。それで1シーン1シーン、録音して、全部タイム計るんです。庵野さんが一言「早口でしゃべってください」とおっしゃって。「はい、もうちょっと早めにしゃべってください。もう1回やります」と何度も繰り返して、そこで尺を決めてらっしゃっているという感じがありましたね。
権八:そこから音コンテをつくるんだ。
澤本:そうだね。僕ら的に言うと音コンテをつくってる感覚に近いんだね。それをその場でやったんですね。
長谷川:『ソーシャル・ネットワーク』という映画があったじゃないですか。あの映画でも監督が役者に早口を要求したと。
権八:マーク・ザッカーバーグ役の子はかなり早口でしたよね。
長谷川:「4時間の台本だから、それを倍でしゃべってくれ」と、実際にしゃべらせたら、聡明に見えるし、いいということになって、そういうやり方があると。わりとそれに近い感じはしましたね。資料としてもらったDVDは官僚の方々が仕事をしている映像なんですけど、本当にあれぐらいのスピードでしゃべってるんですよ。
澤本:えー、本当ですか?
長谷川:はい、でもそんなことないんじゃないかと疑ってもいて(笑)。たまたま早くしゃべるDVDなんじゃないかと思ったりしたんですけど、とにかく早くしゃべってほしいということはずっとおっしゃってましたね。庵野さんに「早くしゃべれなかったらどうするんですか?」と聞いたら、「うん、そういうときはカットしちゃうからいいよ」って。
だから、大御所の俳優さんも含めて全員が噛むことに対してプレッシャーを感じていて。庵野さんはずっと黙って見てるので、何を考えてらっしゃるかわからないと。
権八:庵野さんは感情の込め方など、そういう話はされないんですか?