庵野監督の画角へのこだわり
長谷川:僕はしました。みなさんはお話されなかったんですけど、僕は主人公である以上、ここはどういう意図で書かれたのかということを詰めないとダメだと思ったので。人見知りなんですけど、頑張って庵野さんに話をしにいって、「これは裏にはこういう意味はありますか?」「それは絶対ある」「存在を消しているような人物ですよね」など、聞けなかったらわからないことがいっぱいありました。
権八:人物の説得力がすごいですよね。それこそ長谷川さん演じる矢口の市川実日子さんに対する言葉づかいも非常に繊細にやられてましたよね。
長谷川:あそこも台本上では敬語を使わないで、「上陸した場合どうなるんだ!」と、威圧的な感じで政治家然としたしゃべり方だったんですけど、「こういうしゃべり方をすると、足を引っ張られませんか?」という話を庵野監督として、「そうだね。ここは全部敬語に変えよう」と後から変えたり。いろいろ細かくやりましたね。
権八:『シン・ゴジラ』はもちろんドキュメンタリーではないんだけど、設定がリアルで、いちいち説得力があって、かっこよくて、カメラワークもよかったしね。
長谷川:カメラは最低でも3台、多いと8台、庵野さんご自身でアイフォンを持たれたりして。庵野さんは1人ひとりのカメラマンのところに行って、「違う違う、これじゃ全然面白くない」「そんな程度しかできない?」「右に5センチ、左に3センチ」と指示されていて。僕はミリと言わないだけいいと思って見ていました(笑)。画角に非常にこだわってましたね。ああいう姿を見ることができたのは面白かったなぁ。
権八:今後、長谷川さんも監督業はいつかやってみたいという気持ちはありますか?
長谷川:いえ、それはないですね。監督は大変ですよ。僕はずっと役者でやっていきたいですね。いろいろな監督さんとご一緒させてもらって、そう思います。
澤本:長谷川さんはいろいろな監督と仕事をされてますよね。僕は園子温さんの『ラブ&ピース』という映画が好きで。
長谷川:澤本さんがあの映画を見て、「よくあそこまで振り切ってやられましたね。同じクリエイターとして、あれだけ自由にやっているのが羨ましかった」という話をされていたのが印象的でした。そう言っていただいてうれしいですよ。
澤本:これは権八も好きだと思うよ。
長谷川:結構ぶっ飛んでますね。これを見ると、さっき権八さんがおっしゃっていたような『シン・ゴジラ』や『小さな巨人』の正義感溢れる真面目な印象とはちょっと違うと思います。ぜひ、『ラブ&ピース』と『地獄でなぜ悪い』も見てみてください。
権八:両方、園子温監督ですね。どちらの役が普段のご自身に近いですか?
長谷川:どっちもどっちですね。いろいろなときがありますから、どっちもあると思いますよ。
権八:それはまた面白いですね。見させていただきます。
<後編へつづく>
構成・文:廣田喜昭