カンヌ映画祭に参加して感じたこと
長谷川:ちょうど『小さな巨人』の撮影中で、撮影も本当に毎日ギリギリだったんですけど、映画でカンヌに行けるってなかなかないじゃないですか。そんなチャンスはなかなかないので、TBSのプロデューサーさんに無理を言って、共演の香川照之さんにも許可をいただいて。
澤本:許可を(笑)。
長谷川:捜査一課長に「行ってきてもいいでしょうか」という話をしたら、「うん、一番いい時期に大手を振って行ってきなさい」とおっしゃっていただきました。香川さんも何度も黒沢さんの映画でカンヌや各国の映画祭にたくさん出られていて、「出てみるのはいいですよ」と言っていただいたので行きました。
ただ、本当に時間が全くなかったので、滞在時間は24時間なかったんじゃないですかね。天気もいいし、いろいろな人達がいっぱいいるし、お祭りだと思って浮かれていたら、すぐに「タキシード着てください」と言われて、レッドカーペット歩いて、後ろにダスティン・ホフマン、ニコール・キッドマンがいるからちょっと見たいと思ったら、「ダメです」と。
権八:えー、見てもいけないの(笑)。
長谷川:見に行っちゃダメだと。それで上映会に行って、終わって、「そのへんを歩いてきたいんですけど」と言ったら、「もう時間ありません」と食事会になって。一杯飲んだらすぐ眠くなっちゃって(笑)、起きたらもう出発の時間でした。
権八:『散歩する侵略者』の上映を見た現地のみなさんの反応はどうでしたか?
長谷川:見入るところが違いましたね。『散歩する侵略者』は愛の話だったりするんですけど、神父さんが出てきて愛の話をするシーンは日本人の僕から見ると照れくさいと思うところがあるんですが、そのシーンになったときにフランス人だけじゃなく西洋の方々が食らいついているのを感じたんですよ。溜息をついているのも聞こえてくるぐらいで。
ここまで愛の概念は違うんだと感じて、そこは意外なところでした。あと、よく笑いますね。僕が死んだときのリアクションなどシリアスなシーンも笑います。女性の方は長澤さんの役に感情移入するみたいで、客席から「主演の女優はどこにいるの?」と、ずっと聞かれました。でも、長澤さんは仕事の都合で、僕と松田さん、黒沢監督の3人だけだったんです。
一同:(笑)
権八:もっと話を聞いていたいんですけど、お時間が来てしまいました。長谷川さんが今後チャレンジしてみたいことはありますか?
長谷川:よくそういう風に聞いていただくんですけど、自分がやりたいことを口に出すといつも叶わないんですよ。
権八:え、そうですか?
長谷川:そうなんですよ。それは心の中に止めて、人に言わないで、自分の中でこうしたいと念じていると忘れた頃にやってくるんですよ。だからちょっとそれは言えないですね。
澤本:これはいい話だね。
権八:澤本さんは逆ですよね。言うことで手繰り寄せる。
澤本:そうだね。手繰り寄せるというと漁師みたいな(笑)。言うことと、お祈りすることですね。どちらかというと、言わないと自分が動かないほうだから。
権八:長谷川さんはやってみたいことあるけど、こんな番組では言えないと。
長谷川:そうですね。
権八:そうですねって(笑)。
長谷川:嘘です(笑)。素敵な番組です。もしどこかで僕がやりたいことを言っていたとしては、それに関してはやりたくないものだなと思っていただければ。
澤本:じゃあ、「またこの番組に出たい」と言われたらおしまいだね(笑)。
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構成・文:廣田喜昭