電通から「青年失業家」に転身した理由(ゲスト:田中泰延)【前編】

大好きなブルーハーツが「好きなように生きなさい」と言っていた

田中:1つはブルーハーツが好きだったこと。ずっと好きで、甲本さんや真島さんは怒るかもしれないんですけど、勝手に要約すると「好きなように生きなさい」と言ってる気がしたんです。そう思いながら24年間、会社員をやってきちゃったんですけど、あんなにブルーハーツの歌が好きなんだったら、歌ってるように無茶をしてみようかと。

中村:ドブネズミみたいに?

田中:そうなんです。

それともう1つ、マキシマム ザ ホルモンのマキシマムザ亮君から「文章を書いてほしい」と言われて、マキシマム ザ ホルモンの音楽を初めて全部聞いたんです。そしたら、ブルーハーツのカバーをしているのがあって、こういう偶然はないなと思って。

権八:それは何のカバーだったんですか?

田中:『月の爆撃機』という曲です。マキシマム ザ ホルモンの「鬱くしき人々のうた」という曲の最初のところだけ、亮君が歌いながらブルーハーツを弾いてるんですけど、これが心にジンと来て、辞めようかと。

あとは「街角のクリエイティブ」というサイトで映画評を書いていて。それは電通のサラリーマン時代に辞める気がサラサラない状態で頼まれたんです。それを1年ぐらい書いているうちに糸井重里さんから「ちょっと会いませんか」と。

澤本:糸井さんからお声がかりがあったということですか。すごいですね。

田中:そうなんですよ。急にDMが来て、最初は「絶対にこれは偽物だ」と思いました。行ったら別の人が来て、「糸井さんは残念ながら来れないんですが、私に20万円ほどまず振り込んでください」という話になるに違いないと(笑)。

権八:でも、行ってみたら本物がいたということですか?

田中:京都駅で待っていたら、改札の向こうから歩いてきて、僕はでっかい声で「糸井重里だ!」って言いましたからね。

一同:(笑)

権八:得意のお土産はもっていったんですか?

田中:お土産もっていって。あ、今日もあるんですよ、大阪名物「面白い恋人」。

糸井さんと会って、その後2カ月ぐらいして、糸井さんがそのとき気になっている、ものを書く人を食事会で集めたんです。そこに燃え殻さんというのが。

権八:最近、小説デビューされた。

田中:そう。それから『嫌われる勇気』を書いた古賀史健さん。あと株式会社ほぼ日の書き手である永田泰大さん。それから作家の浅生鴨さん。このへんが集まって、糸井さんが「僕は君たちが書くものが気になってるから、真剣にものを書きたまえ。みんなで雑誌でも同人誌でもつくればいい」と言われて。それで文章を書いて、食って行くことにしたほうがいいのかなと思いはじめたんです。それが1年前の夏ですね。

澤本:去年の今頃。

中村:同人誌はつくられてるんですか?

田中:今、準備中で年内にはやろうと、またそのメンバーで集まるんです。1カ月ぐらい前に燃え殻さんが小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』を出したでしょ。

権八:買いました。まだ読んでないですけど。大評判ですからね。泰延さんが書評書かれてましたよね。

田中:すごい売れてるんですよ。ベストセラーで。どこに行っても平積みになってるからよかったんですけど、1カ月前に糸井さんが「たぶん本人は小説出したら売れると思いこんでるから、発売後にみんなで集まって、酒飲んで慰めないとダメだ」と言って(笑)。日程だけ決めていて。でも、ベストセラーになったので、集まったら「糸井さんがそういう主旨で集めたんだけど」と笑い話にしないといけないんです(笑)。

権八:いいですね。うらやましい。

次ページ 「テレビ局の社員はイキッテる?」へ続く

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