履歴書に「トラック運転手。元気です」と書いて、電通に入社した(ゲスト:田中泰延)【後編】

今後、小説を書くこともありますか?

中村:そんな田中泰延さんは今後どうなっていくんですか? おそらく文筆の話、映画の話とリンクしていきそうですけど、今後やってみたいことはありますか?

田中:本当にノープランで。住宅ローンどうするかなとか、そんな悩みばかりです。映画の話をしてると言っても、映画会社から「試写会来い」などは全く声がかからないんですよ。

澤本:試写会も? もったいない。

田中:僕の映画評は累計150万PVぐらいあるんですよね。雑記のほうも100万PVぐらいあるから、1社ぐらい「うちの映画見て、書きませんか? ちょっとお金あげます」と言われてもいいと思うんだけど。僕も遊ぶ金が欲しいけど、全然ないですね。

権八:泰延さんは良い映画は本当に手放しで面白く褒めますよね。

田中:どこか自分が面白かったか、感動したかを人に言いたいんですね。

権八:これだけ映画に詳しくて、精通していて。澤本さんみたいに映画つくろうという欲は?

田中:つくる側にまわるのは大変だと思うんですよ。澤本さんも大変だったんじゃないですか?

澤本:大変でしたよ(笑)。

権八:しかも広告やりながらね。

田中:聞けば澤本さん、まだいろいろ考えもあるらしいじゃないですか。

澤本:ずっとそう言っていて、全く進んでないです。

田中:馬場さんとその話、ずっとしてました。

権八:小説は?

澤本:一番下世話な話だけど、借金を返すには印税じゃないですか。

権八:借金(笑)。ローンね、ローン。

澤本:あれだけ文章うまいんだったら小説書いたり。

田中:当たりそうな小説書きたいですね。『君の胆嚢を食べたい』とか。

権八:こうやってはぐらかしてるということは何か考えてますぞ(笑)。

田中:いや、小説はね・・・田中でございます、こういうことありました、こんな映画観ましたというのと違って、1つのキャラをまとって、なりきって、何万字書いて、「これは俺が書いたものだけど、俺とは関係ない」という顔をするということじゃないですか。この覚悟を持つのはなかなかね。燃え殻さんは自然にできてると思うんですよ。でも、僕みたいな明け透けな人は難しいんじゃないかと思って。

澤本:でも、コラムで7千字書いてたら、短編1本書いてますよね。

田中:そうなんですよね。ツイートも140文字を1日100個してたら、1万4千字なんです。

一同:(笑)

田中:むちゃくちゃ量産してるはずなんですけど、小説は覚悟がいるかなと思って。ただ、はあちゅうさんも『群像』に短編が載ったんですよ。しかも持ち込みで。

澤本:持ち込みなんだ。

中村:エネルギッシュだなぁ。

田中:はあちゅうは純文学の道、林真理子ロードを。コピーライターから純文学のほうへとね。林真理子さんは糸井重里さんのところにいたんですよね。

澤本:そうなんですか?

田中:そう、意外でしょ。もともとはコピーライターの弟子みたいなものなんですよね。

権八:糸井さんとの対談で肝だと思ったのは、「読者として書いている」ような感覚で。なかなか伝えるのが難しいと思うんですけど。

田中:映画評も掃いて捨てるほどあるじゃないですか。Yahoo!の映画レビューを見たら、何千人が1個の映画について面白かった、ここが良かった、最悪、金返せ、とか書いてある。それから映画ブログをやってる人も多い。あと、町山智浩さん、ライムスター宇多丸さんなど、プロの映画評論家もいて。

お金払ってでも読みたいというのもあれば、いろいろなレベルの映画評があるんだけど、僕は映画を見たら一通り全部見ます。町山さんや宇多丸さんのラジオも聞いたり、『キネ旬』、『映画秘宝』をバーッと見ますけど、そこに書いてあるのと同じ感想で、町山さんが言い当てているとなったら、僕は書く必要がないんですよね。

同じことをやっても真似したと言われるし、読む人いないので。一通り見て、「なんでこの感想がないんだろう、俺読みたいわ」というのを書くんですよ。読みたいけどなかったら、「今夜俺徹夜して書くの?」ということになると。その書き方ですね、ずっと。

中村:そろそろお別れの時間が近づいてきております。今後、新連載や新しいところへの寄稿もありますか?

田中:そうですね。あともう1つ、急に呼ばれてはじめたのがザッパラスという会社の「占いTV」というスマホで見れるテレビの中で、占い師200人に1時間ずつ話を毎週聞こうという壮大な「ひろのぶの部屋」というのがはじまりました。

中村:角田陽一郎さんですか?

田中:そうそう、角田さんがプロデューサーで、いいように使われてます(笑)。

<END>

構成・文:廣田喜昭

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