企業は自ら「採用したい」学生にアプローチ
さらに、学生と企業が出会うツールや取り組みも多様化してきました。これまでの採用広報は、求人広告としての就職ナビサイトや合同企業説明会、学内での説明会など、限られた手法しかありませんでした。
しかしこの数年、スカウト型サービス、逆求人型のイベント、新卒紹介、SNSなどのツールの増加や、インターンシップ、友人や社員からの紹介、OB訪問、リクルーターなどの取り組みが増えました。ポイントは、企業が直接、自社が採用をしたいと考える学生との接点を持てるようになったことです。
これまでの「求人広告型」採用では、多くの学生に認知・応募してもらい、多くの学生を落として内定者を決定していましたが、現在では、採用対象の学生にピンポイントで認知・応募してもらい、学生と企業のやり取りを密にとり、選考を進める方法が取り入れられるようになってきました。
選考プロセスが個々の学生によって異なるケースもあり、「選考を進めるうえでお互いが理解し合い、企業が内定を出して、学生が承諾をする」という個人に向き合った採用活動をする企業が増えてきました。そのため、企業の採用担当者は、採用したい学生にいかにアプローチし、いかに早く採用につなげるか、が課題になっています。特に、デジタルネイティブ世代である現在の学生には、自社のWebサイトやSNSを通じたコミュニケーションは有効です。
来年度の採用は…より「個人」に向き合う採用へ
さて、2019年度卒の新卒採用についてですが、企業の採用意欲は高いままなので、上記の傾向は続くと考えられます。つまり、2018年度卒採用の特徴がより強化されるイメージです。企業の採用活動はさらに「積極化、早期化、多様化」し、採用したい学生にピンポイントにアプローチする採用活動」を求められるようになります。HRテックやAIの活用も、より個人(学生)に向き合う時間が増えることにつながります。
企業は、説明会や選考を通じて、改めて「学生に何を理解してほしくてその取り組みをしているのか?」「自社がなぜ採用活動をするのか?」を考えて、それを学生に伝えていく必要があります。というのも、企業が学生に内定を出し、それを学生が承諾するには「理由」が求められるからです。また入社後の定着、活躍を考えると、入社までに仕事内容や社員、社風、文化を理解する機会を作り、企業からの積極的な情報開示をすることが大切です。
併せて、今いる社員がイキイキと働く環境を作っていくことも求められます。採用場面だけ、良いことを伝える、見せかけの取り組みやテクニックでは、入社後の定着や活躍は難しくなるでしょう。
また、SNSが発達した今の時代、そのような取り組みは簡単に見透かされてしまいます。ゆえに、企業は「本質的な採用活動」、「本質的な会社経営」が求められているのです。
筆者:谷出 正直氏(採用コンサルタント/アナリスト)
奈良県出身。筑波大学大学院体育研究科を修了。新卒でエン・ジャパンに入社。子会社へ出向を含め、新卒採用支援事業に約11年間携わる。新卒採用の企画営業、コンサルとして約150社の新卒採用を直接、支援し、採用成功に導く。営業として、4年連続、年間売上№1を残す。就職サイトや合同企業説明会、採用ツールの企画営業、採用コンサル以外に、新卒採用市場がめまぐるしく変わる中、スカウトサービス、新卒紹介などの事業の立ち上げ、企画、営業、運営に携わる。2015年末退職、独立。独立後は、企業の新卒採用のコンサルティングや採用アナリストとして活動。新卒採用に関する情報、ノウハウの収集や発信、共有の仕組み、人のつながり作りに強みを持つ。メディアへの情報提供や日経WEBサイトでのコラムの連載、記事の寄稿、企業や大学でのセミナーの講師、人事・経営者向けの勉強会・交流会の主催、オリジナルのメルマガの配信などを行う。
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