「書籍は“熱量が伝わるブログ”で売る!」ベストセラー連発 編集者 箕輪厚介氏に中川淳一郎氏が迫る

書籍の編集者と言えば、「先生、お原稿の方はいかがでしょうか。本日は虎屋の羊羹をお持ちいたしました」「おぉぉ!これはすっ、素晴らしいお原稿でございます、ははー!」といった形で、とにかく礼儀正しく文化的かつ「大人」な対応をする人物が多いと思われるようだが、幻冬舎・箕輪厚介氏は全然違う。

「バーンとやらかしましょうよ」「あいつら、つまらないじゃないっスか」と言い放ったかと思えば、酒を飲んで見城徹氏とともにネット番組に出て過激発言を繰り返し、母親から「アンタがそんな息子になっていたなんて……」と嘆かれる始末。しかしながら『空気を読んではいけない』(青木真也・著)、『多動力』(堀江貴文・著)など矢継ぎ早にヒットを飛ばすなど、編集およびプロモーションの腕は確かなものである。

書籍のプロモーションは、基本的には新聞広告と『王様のブランチ』(TBS系)や各種メディアでの書評に取り上げられることに期待がかかっていたが、箕輪氏はネットを活用する。同氏に書籍のネットプロモーションについて聞いた。

文:中川淳一郎氏

大きな海の中でコンテンツを発見してもらう

左)中川淳一郎氏(Web編集者)
右)幻冬舎・箕輪厚介氏

中川:箕輪さん、ネットのプロモーション、相当やってるじゃないですか! 突然、青木真也選手と一緒にゲリラサイン会やって、その様子をTwitterで逐一報告したり、『東洋経済オンライン』で青木選手のインタビューが載ったりもするし。箕輪さんはネット上の話題づくりが上手だと思うのですが、ネットプロモーションをどう捉えているんですか?

箕輪:ネットって、大きな海の中にポツンとコンテンツがある感じなんですよ。そのコンテンツを発見してもらうのが最初のスタートライン。本屋さんは棚の面積が決まっているので、並べられれば物理的に見つけてもらえます。しかしネットだと、無限の広さがあるので、こちらから着火しないと、本が発売したことすら気付いてすらもらえないんですよ。

中川:無限のコンテンツがあるわけだから、競争は激しいと思いますが、他の書籍編集者とのPR合戦、という観点からすると「まだ競争は激しくない」ということでしょうか?

箕輪:そうですね。まだ、競争相手は少ないと思っています。時々いかにもWebでバズりそうな本を出しているのに、びっくりするほどバズってなかったりする本もありますね。宝の持ち腐れだと思いますよ。ただSNS上で、発信力もない編集者が「新刊出ました!」とかTwitterやFacebookで書き込んでも、同業者がが「うわー、すごい!」とか「うわー、おつかれさまでした!」とか言うだけですからね。

中川:それって箕輪さんが6000人以上Twitterのフォロワーがいるからこそできるって話ですか。だったらフォロワー増やせば、ネットのプロモーションが得意になるって話ですか?

箕輪:う~ん、「卵が先か、鶏が先か」って話になってしまうのですが、発信することでフォロワーが増えて、フォロワーが増えることで効果も上がるって感じですね。最初は、影響力がないと思うんですが、そこでいかに地道にやるか。近道は意外とないですね。しかも、フォロワー数がそのまま影響力になるのではないんですよ。エンゲージメントとアクション率の高さが大事です。

中川:なんっすか、それ? エンゲージメントアクションって婚活かなんかですか。出会い系サイトに、どれだけ登録させるか、みたいな話ですか?

箕輪:違う違う!僕は6000人ぐらいしかフォロワーはいないですが、ムダに1万人いる人より、「買おう」とか「RTしよう」とか考えてくれる人が多いんですよ。これが「エンゲージメントとアクション」の意味です。あとは何よりも僕自身の発信力ではなく、僕がハブとなって祭りを起こしていくみたいな形が多いです。僕の親しくさせていただいている堀江さんやイケダハヤトさん、はあちゅうさんなどの超一級のインフルエンサーを巻き込んでいくイメージですね。

でも、それは小手先では難しいことで、本当に自分がいいと思うものをつくった先にしかない。あと散々語っておいてなんですが、今でも重要なのはリアルの書店。結局、堀江さんみたいなネットで人気のある方でも、電子で売れる割合は2~3割くらい。結局は書店が、まだ強い。書店に行く人はTwitterやっていない人ばかりです。どんなにTwitter上でお祭り騒ぎになっても、世の中の人はだーれも知らないというくらいの感覚が正しいと思っています。ネットはあくまで、最初の着火剤。SNSだけでベストセラーをつくるのは難しいし、ネットのバズを過信しない方がいい。

中川:「そもそもいい商品をつくれ」って、ことなのですね。ネットのプロモーションは後からついてくる、ということですか?

箕輪:そうですね。マーケティング的につくったものは、火をつけにくいですね。そもそも僕は素材を選ぶとき、“人間”で選んでいるんですよ。僕がその人を面白いと思うかどうかっていう、超個人的な偏愛。売れるか売れないかより、好きか嫌いか。で、僕が魅力を感じるのは“異物感”を持った人だったり、無軌道な若者だったり、こいつあぶねぇなぁ、ってヤツ。それを著者に据えようとしています。

『人生の勝算』の前田裕二さん、イケダさん、青木さんって、いずれも「こいつヤバいな……」的な人です。その人を題材に、その人の生き方に沿った仕事論というのをつくるのですが、僕は人間が好きだから、仕事のノウハウではなく人間性の方に寄ってつくってしまう。でもそうやって偏愛にまみれてつくったものは、最終的には胸に突き刺さるコンテンツになります。「読んで人生が変わった」という人が続々出てきます。人に刺さりやすいコンテンツかもしれませんよね。進研ゼミの漫画みたいな感じかな。いや違うか(笑)。

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