TwitterのRTは、もはや広告として認識されている?
中川:ネットの「バズ」って何なのでしょうか? RTの数なのですか?
箕輪:昔はそう思っていましたね。編集者になりたてのとき、堀江さんの『あえて、レールから外れる。逆転の仕事論』という本を編集したのですが、この本では7人のイノベーターの仕事論を堀江さんが論評する本です。
発売時に、この7人に一斉に本のことをRTしてもらったらAmazonランキングでガッと上にいった。すごいな!と思ったのですが、これはもう2年前の話。今、RTしてもらうだけではほぼ何の意味もないですね。田端信太郎さんにしても、堀江さんにしても、RT単体の威力は下がったかと思います。というのも、RTが日常になったからなんですよね。
持論なんですが、今の若い人ってスマホネイティブっていうか、スマホ上のものを「広告だと認識した瞬間に、脳に入れない」という生物的な能力が身についていると思うんですよ。動物が身体に毒になるものは吐き出すみたいな。広告か、そうでないかを一瞬で判断して「広告だ、読み飛ばそう」みたいな判断を無意識的にしていて、RTはもはやそういった、広告側のものになっていると思われます。ただ、そんな状況でも、滅多にツイートしなかったり、RTをほぼやらない人がRTをしたら相当すごいかな。
ダウンタウンの松本人志さんが、何かの本をただRTするだけでも、Amazon1位になると思う。要はインフルエンサーと呼ばれるような人のRTは、広告と判断されスルーされがちだって感じですかね!
だからこそ「本当にその人がいいと思っているな」と伝わらなくてはいけない。例えば、本をバズらせたかったら、本の感想が熱量をもって書かれていることが重要です。そういった意味で、僕はTwitterより書くのが大変なブログは熱量を伝えるのに向いているし、効果があると思っています。ブログは、Twitterでは字数的にも、感情的にも収まらないことを書く場ですよね。ブログを書くというのは、もっと伝えたいという熱意があるわけです。ブログより簡単なSNSが出てきたからこそ、骨太のアツいエントリーにパワーがあるんですよ。
中川:「知り合いの○○さんが書いたこの本面白かったなう」とかじゃダメってことですね。あと、Twitter中毒みたいな人が少しホメていても、もはや熱量が感じられない、と。
箕輪:たとえば、サイバーエージェントの藤田晋社長がアメブロでとある本をホメたらすごく効果あるでしょうね。1記事1記事をしっかり書くし、嘘つく必要のない人だからそうなるわけです。超売れる。
堀江さんは毎月出しているから、「本が出たよ」というツイート自体には効果はあまりないかもしれませんが、もし、がっつり自分のブログやFacebookで、自分の新刊への想いを書いたらものすごく売れるでしょう。絶対やらないでしょうが(笑)。
Twitterの場合、数万RTとか圧倒的なバズり方をすることはありますが、それがそのまま売りに繋がるとはいえなくて、ブログの“熱”とは別物ですね。だから両方やればいいんですよ。でも、中には「あぁ、こりゃ、業務的にブログ書いてるな(笑)」というのがすぐに分かるような人がいる。140文字すらなく、アマゾンのリンク貼ってるだけだったり。こういったブログはまったく効かない。むしろ、「この人、本当に狂っちゃったなぁ……」と心配されるくらい猛烈なブログのほうが効く。
そう考えるとキングコング・西野亮廣さんのブログはエンゲージメントの高さも日本一なんじゃないかと思います。前田裕二さんの『人生の勝算』の「はじめに」を西野さんのブログに掲載したらアマゾンで1位になりました。1000冊ぐらいは売れんじゃないかと思います。半端じゃないです。西野さんは自分が本当にいいと思ったものしか勧めないので、「西野さんが言うのであれば、お金を出したいという人」が、本当に大勢いたということです。あんなにブログが強い人は滅多にいないですね。
中川:2000年代中盤、ブログの世界には「書評ブロガー」的な人がいて、その人がけっこう影響力あったのですが、彼らは重視していますか?
箕輪:えっ? 書評ブロガーとか知らないですね……。
中川:えぇぇぇ! あの頃、すごかったですよ!
箕輪:だって僕、まだ32歳ですよ。今日、誕生日なんですよ。さっき会社に「誕生日おめでとう」のお花が届いたのですが、誕生日に花が届くとか、タレント気分かよ! みたいには社内の方々には嫌われる感じがするので、今日は会社戻らないことにしました。
それはさておき、本を紹介してくれる人を「書評ブロガー」というくくりで見たことはなかったです。青木真也さんの本について、中川さんが書いてくれたブログもバズりましたね。
中川:あぁ……。「青木の本を読んで人生変わった」なんて書いてるヤツはバカだ。お前はこの本をちゃんと読んでないな、ボケ! 青木は書籍ごときで人生変わるヤツをバカ扱いするクレイジーな野郎だ! みたいなとんでもない書評もどき文章でしたね、ウヒヒ。
箕輪:そうそう、あれは熱量があった! だからバズったんですよ。僕だって「この人に書評を書いてもらいたい」というのはありますよ。青木さんの本は中川さんに書いてもらいたかったんですよ。「お前らは何も分かってない!」と言えるロッカーみたいな人。コンプラとか色々ある中で芸能人やサラリーマンは本当のことを書けない。そんな人間ばっかりだから「この人は本当のことを言える」という評判がある人がいいと言ってるものは売れるんですよ。