本当のことを言えなくなるほうがリスク
中川:いやぁ、箕輪さん、強気っすね!
箕輪:いやぁ~それほどでもないんですよ……。発行する本の数が多すぎると、どうしても嘘つきになってしまうんですよね。毎月毎月、決定的な本をつくれるわけではないですし。周りの人が、僕に付き合うのに疲れてしまうこともあると思います。正直ダメだなぁ、と思う本もあるわけで、これからは一球入魂が出来るように企画は絞っていくのもいいかもしれませんね。
中川:熱意ってものは出そうと思えば出せるわけで、編集者ならば誰でもできるものでしょうか?
箕輪:うーん、僕より熱意ある人はいくらでもいると思うんですが、それをある種、演出的に利用して、ネット上のバズにかえるとこまでいくのはなかなか難しいですよね。Twitterやれよ、と言って解決する話ではない。だから、他の編集者が、「俺もTwitterやろう」といって毎日つぶやいたところであんまり意味ないだろうし。これは努力でできるわけではないんですよね。見知らぬ誰かとSNS上で喧嘩したり、私生活さらしたり、人間丸出しにしてリスクをもってやらなきゃ面白くないし。だから、サラリーマンは、きついことだと思っています。
僕は非常に自由にやらせてもらっているので、というか勝手にやってしまっています。作家さんとケンカになろうが、書店さんに怒られて会社に迷惑かけたら、最悪クビになってもいいやって思ってるし。それより本当のことを言えなくなるほうがリスクですね。
ただ、多くの編集者はサラリーマンだし、作家さんをリスペクトしているわけだから、なかなか無責任なことは言えないですよね。編集者っていうのは凄まじい慎重さで作家さんとやり取りしているんです。「本出ました!」ぐらいは言えても、僕みたいにその内容を勝手に解釈したり、いじったりすることはできない。でも、編集者自身が身を切らなければバズらないんですよ。
中川:箕輪さんが担当した、新刊『組織の毒薬』については、腹案はあるのですか?
箕輪:著者である日高さんが所属するサイバーエージェントには社員が4000人いるので、そこに着火させなくてはいけないでしょう。だから社長である藤田社長に渾身の暑苦しい手紙を書いて、ブログで紹介していただけるようお願いしました。実際、藤田社長のアメブロに日高さんの本について書いてもらった後めちゃくちゃ売れましたよ!
あと、サイバー社員にバズってるということが(学生や転職したい人などから)知られたら売れます。まずはサイバー社員を着火剤にしたい。だから、まずはサイバーエージェントのお膝元である渋谷の書店で第一位になることを目指しています。渋谷から火をつけて、青山や六本木などに地道に広げていく。そういった局地的なヒットから全国に広げて行きます。
本書は、組織に働く人に向けたコラムです。タイトルは過激ですが、「煽りたくない」と日高さんは言っていました。
もともと、日高さんはこのコラムを社内向けに書いていたわけで、売ることなんて考えてなかったわけです。ただ、日高さんが単に実利的に社員を動かしたい、という明確な目的のために書いていたものです。売るためのマーケティングから入った小賢しい本ではないのです。世に出すとは考えていない前提で、身内に書かれたものなのです。いわば、文章における「まかない飯」。本当においしいものを自分たちだけで食べていたってことです。
それを僕が強引に「世に出させてください!」と頼み込んでこうして書籍化してもらいました。
この本、本当に役立つことばかり書いていますよ。だからこそ、この見城さんが付けたキャッチーなタイトルで、手に取ってほしい。「恐縮は無駄」とか「組織の犯人探しは、意味がない」といった読者にとって身近な話が書いてある。堀江さんの『多動力』を読むと「電話するやつとは仕事するな」みたいなことが書いてあって「そんなもん、自分にはできねぇよ! ホリエモンだからできるんだろ!」と思う人はいると思う。しかし、『組織の毒薬』はそういうところはなく、誰にでも適用可能な役立つメッセージが書かれています。日高さんは本当に部下に気付いてほしいこと、変わってほしいこと、実践してもらいたいことを書いているので意味があるんです。