ネットとテレビの差はピストルとバズーカみたいな感じ
中川:失敗したウェブPRって何かありましたか?
箕輪:あぁ、あったあった……。本のPRで会社として動画広告やったんですが、ほとんど売れませんでしたね(笑)。さっき言ったみたいに、ネット上では広告と思われた時点で意味がない。動画広告をやるならば、本の制作過程を密着し、全部見せちゃうみたいな広告ではないコンテンツをつくったほうがいいでしょうね。本って、ミネラルウォーターみたいにどれを選んでもいいわけじゃないから、自分の心が動かないと買わないものです。失敗したPRとはいえ、動画広告はそのことが分かったいい例です。
ネットを肌感覚でわかっていないと難しいですよね。でも、いまプロモーション予算を動かす立場の人って、どこの会社でもそれなりの年齢だと思うんですよね。だから結構トンチンカンなことがいっぱいあると思います。実際ネットプロモーションってお金かからないし、むしろ、かけても仕方がないんですよね。
中川:そもそも、書籍に関して、ネットのPRの影響力ってどれほどありますか?
箕輪:青木真也さんの本については、記事を東洋経済に仕込んで、Yahoo!ニュースのトップに行き、Amazonで総合5位とかになって、2万部の重版が決まりました。
でも、ネットでバズっても次の日には消え去っているわけで、見誤ることもある。ネットのバズはあくまで着火剤。もっと大きな火になるにはどうすればいいか、を考える必要がある。未だにテレビには凄まじい影響力があってネットとテレビの差はピストルとバズーカみたいな感じですよ。だからこそ、テレビが取り上げたいというネタをネットで作る。SNSのバズは大きな世間に発見してもらうための種火だと思う。
一人の編集者として、点ではなく線でプロモーションをするために、僕はネット上に「共犯者」をつくるようにしています。僕が熱狂したコンテンツに同じように熱狂し、自ら宣伝してくれるひとたち。その人たちをもっと束ねて強い集団にしようと思って、いま「箕輪編集室」というオンラインサロンをやっています。
だから、健康本みたいなものをつくって、どんなに売れても共犯者はつくれないんですよね。本当に多くの人に伝えたいと思えるメッセージが込められているものでないと。青木さんや堀江さんの本の内容はロックの歌詞みたいなもので、「僕たちのことを代弁してくれている!」という内容です。「人の時間を奪うな」「無駄な会議はするな」「電話はかけてくるな」という若者が上司に感じている不満を堀江さんが代弁している。高校生がブルーハーツの歌に入れ込むのと同じような感じだと思います。
中川:ガハハハ、そんな発想の本を出して、会社のオッサンたちは大丈夫なんですか?
箕輪:『多動力』については上の世代の人は、「あれってさぁ、俺らの仕事、全部否定していない?」と困惑したりしています。でも、こういった世代間のギャップや摩擦は熱になるのです。アンチがいたほうが、ファンは結束する。これが「共犯者」をつくる構造で、熱い書評やブログを書いてくれるきっかけになる。世の少数派の叫びだからこそ共犯者が生まれるわけです。散々プロモーションについて語っといてなんですが、結局は偏愛にまみれて、心から振り絞った叫びのようなコンテンツを作ることが、ネット上で火をつける最初の一歩になるんじゃないですかね。