編集協力:AMD株式会社
子育てと仕事の相乗効果 判断するスピードが劇的に上がった
千布:今年の6月に、クリエイティブプロダクション「mom.ent(モーメント)」を立ち上げました。「ママクリエイターの価値を最大限に引き上げる」ことを目指し、「全員正社員雇用」「徹底したチーム制」を提言し、時間短縮勤務のほか、子ども・子育て支援制度、病児保育やベビーシッターとの提携、在宅ワークの導入など働く女性のサポート体制を整えている最中です。今日は育児をしながら一人のクリエイターとしても活躍を続ける、お二人にママクリエイターがもっと活躍するためにはどうしたらよいのか、お考えを伺いたいと思っています。
森本:私は保育園のお迎えがあるので、5時には帰らないといけないのですが働く時間が短くなっても、まったく問題ないです。毎日が大騒ぎの子育てで鍛えられたのか、出産してから何でも短時間で判断が下せるようになったからじゃないかな、と思っています。もし、そこでの判断が間違っていたら、次に判断するときに軌道修正すればいい。クライアントさんから修正の指示が入っても、落ち込んでいる暇がないので、すぐに対応する。
子育て中だからと配慮していただいて、子どもに関わるお仕事の相談が多いのですが、今こそ広告の仕事を依頼してもらえたら、短時間で成果を出せると思います(笑)。考える脳と心は24時間、常に働いていますが、長くオフィスにいればいいってものではないですよね。
千布:子育てがクリエイターとしての仕事にもプラスに働いているんですね。
森本:判断が早くなって男っぽくなったところがある反面、課題に対する答の出し方は母親的になりました。子どもって一人ひとり全然違うから、子育てに正解なんてない。その子の一番、良いところを見つけて、輝かせてあげるしかないですよね。前は、「こんなデザインをしたら素敵だな」というゴールから考えていたけれど、今は企業や商品の中に眠っている、魅力を見つけることが楽しくなったというか。企業や商品と向き合う時にも、責任を持って育てようとする意識が強くなりました。
千布:子育てと広告やブランディングの仕事に共通点があるんですね。
有機的なチームで動いて互いにサポートしあう
今尾:私も子育てが、仕事に生きているなと思うのと、ますます仕事が楽しいです。一方で時間が足りない…という悩みも。
クリエイティブな仕事をしてきた人は、仕事にのめり込んで、多くの時間を費やしていたタイプの人も多いと思うので、ママになると圧倒的に時間が足りなくなってしまうことがあるのではないでしょうか。でも、いくら効率化の努力をしたところで、働く時間が半分になってしまったとしたら、同じ量の仕事を回すには一人では無理がある。一人で抱え込まずに、できないことはできないと言う勇気も必要かなと思います。
千布:子どもの病気とか、子育て中は突発的な事態も起きますよね。そこで「mom.ent」でも、完全チーム制を採っています。
今尾:仕事と家庭の両方の側でどんなチームをつくるのかは重要ですよね。家族だけでなくママ友やアウトソーシング、信頼できる社会とのチームづくりとか。
そこがいま一番必要だなと、感じています。
森本:いまgoen°には8人のスタッフがいますが組織体制は常に変えています。
子どもの成長によって、私が動ける時間も変わってくるので、頻繁にスタッフとコミュニケーションをとって、その時々に抱えている仕事の状況も見ながら、臨機応変に体制を変えるようになりました。
千布:「mom.ent」は全員正社員雇用なのですが今、悩んでいるのが本当にママクリエイターたちの多くがそういう働き方を望んでいるのかということなんです。
今尾:『VERY』の読者の方たちに話を聞いていると、全体的には会社員として今は細くても長く働きたいという風に感じる方も多くなってきていると思います。
それは働くということが一時のことではないという考えが、一般化してきているからではないか、と。
森本:私は、出産直後は自宅で仕事をしていたのですが、そうすると両方気になって、両方とも集中できなくなる。思い切ってオフィスに来るようになって、頭の切り替えがうまくできるようになりました。
千布:正社員かフリーランスか、起業するかに関係なく、子育てから離れる時間を持つことが重要なのかもしれませんね。
「クリエイティブ・ワークスタイル・ハック・プロジェクト」とは?
2016年9月にブランディング・エージェンシーのAMDと、宣伝会議のマーケティング研究室が共同で立ち上げた研究会。約1年をかけて「今、求められるクリエイティブチームのありかた」をテーマに、様々な立場の広告主企業の担当者などと議論を行い、そこから得られた知見を発信していきます。