恋愛ドラマは、うまくいかない恋愛から生まれるもの?
金子:ドラマは1時間で言葉を尽くして、コピーは数文字で人の心を捉えなければいけないという違いがありますからね。そのなかで、一倉さんの女性の心の機微を巧みに表現するコピーにはいつも驚きますが、あれだけ女心を捉えたコピーを書かれるわけですから、よほど女性的目線を持っているのか、これまでの人生で非常にモテてきたのか、どちらかだろうと思っています。
一倉:どうですかね。これまでもパナソニックの「きれいなおねえさんは、好きですか。」などの女性中心のコピーも書いてきて、「女の気持ちが分かっている」とか言われることもありました。ところが、私の家族や身近な女性から、「どうして分からないの」と言われることはすごく多いです(笑)。
金子さんこそ、『プロポーズ大作戦』(フジテレビ)や『世界一難しい恋』(日本テレビ)といった、まさしく男と女の心理戦である恋愛ドラマを書いているわけじゃないですか。そういう葛藤を表現するのがドラマですからね。それに、金子さんはドラマの設定もかなり工夫していると思います。
金子:やはり上手くいくだけのドラマなんか、誰も観たくないですから。自分は本当に上手くいかない恋愛しか経験してこなかったので(笑)、普通の恋愛ドラマを書いても面白くないという考えは常にあります。
今年4月期の『ボク、運命の人です。』(日本テレビ)というドラマでも、本来なら「運命」という誰もがバカにしそうな素材で、何の見通しもなく10話まで書きましたが、あえて誰も扱わないような土俵で勝負しています。王道のラブストーリーとは違うかもしれませんが、土俵上の敵はなるべく少ない方がいいですから。
一倉:わざと「恋愛ドラマらしくしない」設定にすることで、ドラマが動き出すのだろうね。
金子:僕は元々、ドラマや映画をあまり観ていなかったので、ドラマに興味がない人の気持ちもよく分かっているつもりです。どうしたら少しでも観てくれるか、という視点を持つよう心がけていますね。設定も、普段ドラマを観ない人たちの目に留まるようなフックをつくるにはどうすればいいのか?といつも考えています。
ただ、毎回3話くらいまで書いて、「俺はなんで、このテーマにしちゃったんだろう……」と、自分とGOサインを出したプロデューサーを恨みながら内容を必死に絞り出しています(笑)。