「あなたと、コンビに」はサラッと書いたコピーだった
一倉:ちなみに、金子さんは集中するとなるとものすごいパワーを発揮するタイプかな?
金子:1年に数回ですが、時を忘れる感覚はあります。しかし、その集中状態に持って行くまでが、本当に難しいです。スマートフォンも誘惑だらけで、自分が集中できなくなることが分かっているので、いまだに持たないようにしているくらいです。
一倉:僕はもう40年近く仕事してきたので、自分との付き合い方というか、飼いならし方が分かってきました。自分で「今日はできそうかもしれない」と思え、漠然としたイメージでもあれば集中できるようにもなっています。とはいえ、若いときは効率も悪く、「締め切りまであと何日だから、逆算するともうやらなければ」と、ベッドのなかに入ってからもずっとコピーを考えたりもしていました。
金子:僕も最近、やっと同じことを思えるようになりました。以前は、アイデアが出てこなくても逃げられず、「思いつかない自分が悪い」と考えるくらいでした。今は、「これだけ考えているのに出てこないなら諦めよう」と力を抜いたときに、アイデアが浮かんでくる経験をしたので、根を詰めすぎても仕方がないと。
一倉:僕も「どうやってコピーを書いているんですか?」とはよく聞かれますが、自分のなかで着地すべきイメージができたら、ほぼ「できた」と言えるんですよね。そのイメージを形に、言葉の意味や音を合わせていけばいいわけですから。
金子:これまで、サラッと書けたコピーもあったりするんですか。仕事にとりかかってからコピーが世に出るまで、どれくらいの期間がかかっているのでしょうか。
一倉:半年や1年近く、ウンウン唸りながらつくったコピーもあれば、本当にサラッと生まれたコピーもあります。例えば、今まで僕が書いてきたなかで一番有名なコピーは、「あなたと、コンビに、ファミリーマート」だと思いますが、あれはね、本当にサラッと書いたものなんです。
金子:一瞬でしたか。
一倉:そうですね(笑)。当時はまだ、テレビでも新聞でも「コンビニエンスストア」と呼んだり「CVS」と書いたりしていた時期でした。「コンビニエンスストア」は、日本人にとっては絶対長すぎる。そんなときに、若者たちが「コンビニ」と呼び始めていることに気づき、これだなと。
金子:そのコピーの文言も、一倉さんのなかから生み出さないといけない作業だと思います。イメージが浮かばないときにされていることは何かありますか。
一倉:しばらく放っておく(笑)。
金子:開き直るということですか。
一倉:最終的には机に向かってコピーを書くわけですが。常に「ああでもない、こうでもない」は考えていても、イメージがつかめるまでは書かない。広告コピーは短いですからね。脚本と違って。極端に言えば、締め切りの30分前でも書くことができる。それで先送りにしがちですが、追い込まれると辛くなるだけですから。これはこれで大変な仕事、いや、大変という意味ではどちらの仕事も同じかな(笑)。
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