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今回は宅配ボックスなどのサービスを展開するフルタイムシステムに訪問しました。取材を受けてくれたのは副社長の原周平さんと、制作チームを率いている唐沢徹明さん。同社は「制作スタッフのインハウス採用」と「女性の採用」に注力しており、その理由と今後の展望についてお話を伺いました。
—貴社の事業や、所属部門の業務について教えていただけますか。
原:当社は「宅配ボックス」を軸にマンションの共有スペースへ、さまざまなサービスを提供している会社です。「宅配ボックス」は昨今の報道で一般的になりつつありますが、実は当社が初めて開発したサービスです。
現在は、宅配ボックスをIoT化し、24時間ネットワークにつなげて荷物の管理を行っています。私自身は副社長として経営全般を担当していますが、以前はプロダクトのデザインやパンフレットなどの制作物も責任者として担当していました。クリエイティブ職種というよりは、当時は社員数も少なかったので、なんでも担当していたというだけですが。
唐沢:私は元々、広告会社にいたので、17年前にフルタイムシステムへ転職しました。転職した当時は、カタログなどの制作物をつくっていましたが、現在はさまざまな業務に関わっています。
所属しているプロジェクト推進部は、事業課と制作デザイン課に分けられます。事業課は、新規事業の開発を行っており、たとえばマンションの住民に対する農業収穫やマルシェなどのイベントの企画・実施・開発をしています。制作デザイン課は、営業資料のデザインから広告の制作や展示会のブースのビジュアル面の監修までと幅広く対応しています。
—制作デザイン課を新たに立ち上げたと聞ました。きっかけを教えてください。
唐沢:以前はプロジェクト推進部のなかで、新規事業や制作・デザイン、広報などの業務を一緒に行っていました。ただ会社を取り巻く環境が変わったため、体制を整えて対応しようという考えがありました。
原:もう少し具体的に説明しますと、実は2017年は「宅配ボックス元年」なんです。アマゾンなどEC事業者の増加や、さらに2、3年前からオムニチャネルという言葉がもてはやされ、さまざまな事業者が関わるようになりました。
こうした流れで、駅やコンビニなどで宅配物を受け取ることができるサービスの話題や、再配達によって配達現場が窮迫してしまう問題などが連日報道されるようになりました。これにより「宅配ボックス」のニーズがものすごい勢いで高まっています。ある意味「社会のインフラ」になり得るサービスなんです。
実は宅配サービスを立ち上げた当初は、BtoB向けサービスだったこともあり、これまで広報を行ってきませんでした。「宅配ボックス」の認知が高まっているなかで、「攻めにでるぞ!」と、体制を整えることにしました。
また、これまでの営業活動のおかげで、業界内では圧倒的な認知やシェアを誇ってきましたが、それは新築分業マンション業界での話です。既築マンションや戸建住宅でも必要とされる状況のなかで、宅配ボックスを導入しようとしたとき、当社の名前やサービスが知られていないケースが増えてきました。
そうなると、製品の中身ではなくビジュアルで選ばれてしまうといった事態に陥ります。後発の類似商品にシェアが奪われてしまう危機感を持ちはじめました。それまでは、製品さえ良ければ大丈夫だと思っていましたが、ビジュアル・デザインもこだわらないといけないと痛感しました。
その中で、なにが“カッコいい”のかの基準やノウハウは社内に貯めるべきだと思い、デザインのプロフェッショナル人材を社員にすることを考えました。
—具体的にどのような体制にして、どのような業務を行っているのでしょうか?
原:まずは制作チームに2人を採用しました。彼女たちには、カタログのデザインだけでなく、ユーザーが“カッコいい”と感じるネーミングや、プロダクトの素材選びやデザイン、タッチパネルのUIなどにも携わっていただいています。今回入社した2人にとって、これまでやったことのない業務だと思いますが、挑戦してもらっています。
また広報担当も専任者を採用しました。これまでは唐沢が片手間で行っていたのですが、ちゃんと担当を付ける必要を感じたからです。経営・制作・広報は三位一体だと考えており、経営は私、制作は唐沢、それで新たに広報を入れて連携を図っています。
経営面では、女性営業チームを新規に立ち上げたり 、新築マンションだけでなく既築マンション向けの子会社を設立したりと、生産・営業体制を整えました。
—女性営業チームを設立したとのことですが、制作チームも女性とお聞きしました。
原:昨今の女性の社会進出と比例して、遅くまで仕事をしている人も増えました。また宅配業者が怖くて居留守をつかう女性もいると聞いています。こういった背景から宅配ボックスのユーザーは女性が多いんです。実際に32年間サービスを提供してきましたが、要望やクレームの多くは女性からでした。
経営層は私含め男性ばかりのため、女性の感性が社内に必要だと強く感じていました。サービスを自分ごと化できる女性をと考え、広報や制作スタッフは女性に担当してもらっています。
また彼女たちを採用する前に、デザイン系の優秀な人材を探していると知人に声掛けしました。話をいろいろと聞いてみると、ある共通点が浮かび上がってきました。それは、子育てでキャリアを離れた女性には優秀な人材が多くいるということ、またこのような方は再就職するのに困っているということでした。そういった人物を当社で受け入れることはまったくもって問題なく、時短でも在宅でも構わないと思い、採用ターゲットにしました。
—実際にそういった方々が勤務されていかがでしょうか?
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原 周平(はら・しゅうへい)
フルタイムシステム
代表取締役 副社長
1974年 大阪府生まれ
1997年 日本大学文理学部体育学科卒業
1997年 シマノ入社
1999年 フルタイムシステム入社、取締役 経営戦略室 室長 就任
2001年 代表取締役 副社長 就任
モットー:チームワークと自主性
気配り、めくばり、心配り
笑う角には福来る
趣味:アウトドア、外遊び
唐沢 徹明(からさわ・てつあき)
フルタイムシステム
プロジェクト推進部 部長
1968年 長野県生まれ
1993年 兵庫県立神戸商科大学(現兵庫県立大学)卒業
1993年 広告代理店入社
2000年 フルタイムシステム入社
モットー:すべてをナチュラルに
趣味:写真撮影