バルミューダにみる、製品スペックを超えた体験価値

「買う前→買った後→買い替え」の全部に関与する

情報が溢れ、多くのメッセージがスルーされがちな現在、メディアや広告手法をニュートラルに横断した、統合マーケティングが必要なことは言うまでもありません。そこにさらに、消費者が興味を持って商品を購入してから次に買い替えるまでのサイクルに積極的に関与して、良い体験を提供し続けなくてはユーザーとの感情的な結びつきなんて築けないのではないか? 消費者と接するすべてのタッチポイント、すべての時間がブランドの体験機会と捉えるべきではないか?と私は思います。

そういう意味では、「究極のアフターサービス」や「コミュニティづくり」、「ポップアップストアを作る」、「体験価値を念頭に開発をする」など、すべてが体験ブランディングになりえますが、単体ではパーツにすぎません。購入前から買い替えまでの長いサイクルで理想的なカスタマージャーニーを描き、それらを複合的に組み合わせることで初めて体験ブランディングが成立すると言えるでしょう。

つまり「消費者にいい経験を積み重ねてもらうためにできることすべて」を想定・検討して、実施する統合的なコミュニケ-ションこそが、体験ブランディングなのです。

<体験ブランディングにおける感情と体験価値形成のプロセス>

 

【1】大量に押し寄せる情報:さまざまなタッチポイントから必要な情報を“選ぶ”消費者。

【2】「これでいい」と「これがいい」:ひとりの中で起きる消費の二極化。お金や時間を費やしても欲しいモノかどうかを選別する消費者。

【3】機能価値から体験価値へ:モノからコトへ。商品やブランドがもたらす感動的な体験や経験が積み重なり強い愛着が生まれ、価値が増大していく。

【4】エンゲージメント構築:購入後の体験価値の深まりがブランドとの絆を深める。

【5】ソーシャルで発信・共感:個人の感動体験はトークバリューを高め、SNSなどでオーガニックに広がり共感・共有され世の中の価値へと昇華する。そして、新たなターゲットを動かす。

次回は、ロングセラーブランドやコモディティ製品における体験ブランディングの可能性についてお話しします.

*1:日経BP社『バルミューダ 奇跡のデザイン経営』より
*2:日経BPネットのインタビュー「“脱常識”家電メーカーのつくり方」より
*3:ほぼ日刊イトイ新聞の対談「バルミューダのパンが焼けるまで。」より

藤井一成氏(ハッピーアワーズ博報堂 代表取締役/クリエイティブディレクター))

1968年広島市生まれ。1992年早稲田大学政経学部卒業後、電通国際情報サービスに入社。1999年から博報堂でインタラクティブクリエイティブを軸に統合キャンペーンを数多く手掛ける。その後、グループ内ブティック、タンバリンに参加。2016年より同社代表に就き、「至福の時間をつくる」クリエイティブブティック「ハッピーアワーズ博報堂」に社名を変更。消費者の“いま”の視点に立ち、ブランドが持つ価値を再編集することで新たなエンゲージメントを築き、ブランドと消費者、社会を次のステージへとポジティブに動かす。「正しいことを楽しく実践して、すべてのステークホルダーを幸せにしたい」という信念のもと、戦略、クリエイティブ、体験デザイン、PR、デジタルなど、360°の視野で構想から実践までを行う。

 

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藤井一成(ハッピーアワーズ博報堂 代表取締役社長/クリエイティブディレクター)
藤井一成(ハッピーアワーズ博報堂 代表取締役社長/クリエイティブディレクター)

1999年から博報堂でインタラクティブクリエイティブを軸に統合キャンペーンを手掛け、その後グループ内ブティック、タンバリンに参加。2016年より同社代表に就き「ハッピーアワーズ博報堂」に社名を変更。

“これでいい…”という消極的選択が溢れる成熟社会で、「ブランド」と「生活者」の関係性をアップデートする“至福”の体験価値をクリエイティブし、ブランデイングとマーケティングの両輪を動かしている。

藤井一成(ハッピーアワーズ博報堂 代表取締役社長/クリエイティブディレクター)

1999年から博報堂でインタラクティブクリエイティブを軸に統合キャンペーンを手掛け、その後グループ内ブティック、タンバリンに参加。2016年より同社代表に就き「ハッピーアワーズ博報堂」に社名を変更。

“これでいい…”という消極的選択が溢れる成熟社会で、「ブランド」と「生活者」の関係性をアップデートする“至福”の体験価値をクリエイティブし、ブランデイングとマーケティングの両輪を動かしている。

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