「パナソニック宣伝100年の軌跡」(7)新たな食文化を提案する — 調理家電の広告篇

もっと面白いものにしていくマインド

草川:画期的な商品が出てきたなと思ったのは、ホームベーカリー。これは80年代後半の商品ですが、本当においしいパンができるのだと、CMをつくる側なのに感心していました。

星野:焼き上がったパンがふんわりとしていて、本当においしそうなCMです。60秒のCMも見ごたえがあります。

草川衛(クリエイティブディレクター)
1971年電通に入社。以降パナソニックなどのCM制作に携わった。電通テック取締役クリエーティブ本部本部長、ACジャパン専務理事を務め、2012年に退社。IBA、ACC、カンヌ、クリオ賞など受賞多数。

草川:本来、伝えたいことは15秒あれば十分なのだと思います。それでもあえて60秒のCMを制作するのが、パナソニックの度量というか、広告に対する強い思いの表れだと思います。面白いことにはとことん突き進むという姿勢が根付いていました。

星野:60秒の広告がひとつの作品になっていますね。面白がりながら制作されたCMは、映像にもそのパワーがにじみ出るのだと思います。

草川:食品のシズル感を大切にしないといけないと学んだのは、ジューサーミキサーのCMを担当したとき。リンゴに2つ蛇口をつけて、サラサラのジュースもトロトロのジュースもつくれることを訴求したCMです。

星野:本物の果物と蛇口を使って撮影しているんですか。

草川:はい。CGはまだ使えなかったので。

調理家電の広告は、機能を伝えることが基本にはありますが、同時に、いかにして使う人の生活に彩りや喜び、幸せをもたらすかを伝えることが大切です。だから食べ物をおいしく見せることだったり、レシピを提案したりといった表現につながっていったのだと思います。

04. 1987年 テレビCM 自動ホームベーカリー「大発明」篇

05. 1978年 テレビCM ジューサーミキサー「リンゴの栓」篇

—これからのパナソニックの広告に期待することは何でしょうか。

星野:今の調理家電の広告は、男性が調理するシーンがあったり、エコの視点も入ったりして時代に合わせた優しい表現になっていると感じます。一方で、これまで培われてきた「広告を見ている人を楽しませよう」という気持ちは、変わることなく持ち続けてほしいですね。優れた商品を世の中に送り出しているわけですから。

草川:世の中が変わって表現も変わり、今の広告は、映像も綺麗になっています。これから期待したいのは、時代にあった面白い表現や映像のさらなる追求。パナソニックの宣伝部門に脈々と流れてきた、「もっと面白いことはできないか」と考えるマインドと、それにこたえるスタッフ、両者の切磋琢磨がさらに進むといいですね。これからも、驚くような商品を生み出し続けてほしいですし、商品を知らせる広告づくりにおいても、制作者自身が面白がることに貪欲であってほしいですね。

くらしにもっと憧れを
 

2000年 新聞 ナショナル炊飯器

大家族でも、一人暮らしでも、多くの家庭にごく普通にある調理家電たち。どれも現代の食生活に欠かせません。冷蔵庫がなかった頃、食材は毎日買うものでした。炊飯器の普及前、炊飯は目が離せない大仕事でした。電子レンジが登場するまで、料理はもっと手間のかかるものでした。1950年代後半に冷蔵庫が「三種の神器」のひとつであったように、調理家電は人々が憧れる「もっといいくらし」を象徴するものでした。そして今、欧米では憧れのライフスタイルとして、ヘルシーな和食を取り入れた食生活が注目されています。それにともない、食材の旬と鮮度を大切にする、和食の価値観で育った調理家電も、欧米を中心に各国に広がっています。憧れの食生活を実現することも、パナソニックが目指す「A Better Life, A Better World」のひとつ。調理家電で、「より良いくらし」を叶えていきます。

調理家電宣伝年表

編集協力:パナソニック株式会社


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