「6兆円市場」の外側へ — 電通、博報堂がイノベーション創出支援サービスを強化

長年にわたり確立されてきた広告会社のビジネスモデルは、デジタル化やグローバル化を背景に、いま大きな転換を迫られている。メディアバイイングを中心とした従来型の広告ビジネスの枠にとらわれず、新しいビジネス機会を創出し、メディア環境やコミュニケーション環境が変わっても揺らがないビジネス基盤を構築することが、規模を問わず多くの広告会社にとって課題になっている。

こうした中、近年、広告・コミュニケーション領域に留まらないサービスを強化・拡充し、クライアントの事業成長により直接的に貢献しようとする動きが、海外のみならず国内の広告会社にも多く見られるようになってきた。10月に入り、電通・博報堂が相次いでクライアントの「イノベーション創出」を支援する新組織および新サービスを発表している。

電通:営業局出身者が率いる新組織

電通は10月1日付で、総勢60人の専門組織「電通ビジネスデザインスクエア」を社内に設置した。未来に向けた新たな方向性の発見から、新事業の戦略設計、仕組みの導入、実行までをワンストップで支援するとしており、同社におけるビジネスデザイン領域の強化・拡充を目指す。

具体的には、次の7つのサービスラインを通じてイノベーション創出を支援する。
①VISIONEERING:企業が進むべき未来の方向性を見出す
②OPPORTUNITY FINDING:企業や事業の新たな機会を見極める
③INTEGRATED DESIGN:新たな機会を包括的な視点で戦略化する
④BUSINESS FRAMING:意思決定要素を分析し、ビジネスモデルを構築する
⑤DEEP PROTOTYPE:製品・サービスアイデアをプロトタイピングする
⑥FUTURE ANALYSIS:新たな事業等の現在価値を導き出し、経営判断を支援する
⑦SHERPARING:事業立ち上げに関わる具体的実行をサポートする

新組織を率いるのは、執行役員の大久保裕一氏。大久保氏は1982年に電通入社後、営業総務を経て、翌93年より営業局配属。2006年に営業局長、2013年に執行役員に就き、2014年7月から2016年2月まではビジネス・クリエーション・センター長を兼務した。

今回の専門組織の設置を通じ、電通はビジネスデザイン領域市場に新たな軸足を置く。顧客企業の事業変革とその実行に必要不可欠な存在となること、またイノベーション創造を求める顧客企業から最初に想起される会社になることを目指す。

博報堂:イノベーションに必要な技術の“目利き力”を取り込む

一方の博報堂は4日、新規事業開発/技術活用コンサルティングなどを手がけるアスタミューゼと業務提携し、イノベーションビジネス支援サービス「Connecting Dots Action Program」を共同で提供すると発表した。

アスタミューゼは、世界80カ国の大学研究機関やベンチャー企業の研究テーマ/特許/新製品の内容とそれらへの投資情報などを含む、世界最大規模のイノベーションデータベースを保有。それを各先端分野に精通した専門アナリストが分析し、企業の投資・提携、新規事業開発を支援してきた。

博報堂が培ってきた「生活者発想のアイデア力」と、アスタミューゼが持つ「技術の目利き力」を掛け合わせ、企業の新規事業開発、イノベーション創出をサポートする。技術の目利き・分析から、新規ビジネスのアイデアワークショップ、プロトタイプ開発、事業計画策定やパートナー選定、事業の実施・運営までをワンストップかつアジャイル型で提供する。博報堂のビジネスプロデューサーがプロジェクトマネジメントを担うことで、アイデア創出や戦略策定といった構想段階に留まらず、事業計画化と事業実現に確実に結びつけていくとしている。

「Connecting Dots Action Program」は、博報堂社内ではビジネス開発局が管轄。初年度に、3件のサービス提供を目指す。


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