自分の仕事の「すごさ」を、エントリーシートで「言語化」しよう!
—エントリーにあたり、クライアントである企業や団体側がOKを出さないのでエントリーできない、というケースがあると聞きました。企業や団体は、自分たちの手口を見せたくないという思いが、強いのでしょうか? エントリーすることでのメリットをどう捉えたらいいですか?
上岡:企業や団体の広報部からしてみると、自分の部署だけで行ったプロジェクトではないので、応募しにくいという思いもあるのかもしれませんね。ならば、他部署と一緒になって協力しながらエントリーすればいいと思います。昨年、当社で応募した際には、エントリーシートを、マーケティング担当者に記入してもらいました。エントリーシートは、戦略(Strategy & Research)、アイデア(Idea)、実行(Execution)、成果(Results)の4つの審査基準ごとに記述するようになっているのですが、記入して初めて、この部分が足りてなかったということに気づいた、すごく勉強になった、と言っていたのが印象的でした。
嶋:エントリーシートという、ある「型」にはめてしまうことにはなると思うのですが、自分の仕事と改めて向き合い、その「すごさ」を「言語化」することになるので、絶対に新たな発見があるはずです。
上岡:どんな案件がエントリーできるか、社内であちこち聞いて回ったのも、いい効果があったと感じています。社内でこんなにも頑張っている人がいるという発見につながるし、お互いの理解を深めるコミュニケーションの機会にもなります。賞に応募するという行為を通して、自分の視野が広がっていくのを実感しました。もちろん、企業や団体の単体エントリーでなくても、PRエージェンシーや広告会社の人と一緒に応募する過程においても、お互いに気づきが生まれるはずです。より良い関係へと進化するチャンスになると思います。
嶋:賞があることで、いろいろなことに気づけると思います。自分の足りていないところはもちろん、他の優れた事例を見ることで、自分のレベルもわかる。もっと頑張ろうと、モチベーションも上がりますよね。PRアワードは、自分の「技」や「気持ち」を高めるための「踏み台」にしちゃえばいいんです。そのためにも、ぜひ皆さんが、その「技」を見せ合ってほしいです。
(聞き手:伊澤佑美)
嶋 浩一郎(しま こういちろう)
博報堂ケトル 代表取締役社長 クリエイティブディレクター/編集者
1993年博報堂入社。コーポレート・コミュニケーション局配属。企業の情報戦略、黎明期の企業ウェブサイトの編集に関わる。2001年朝日新聞社に出向。スターバックスコーヒーなどで販売された若者向け新聞「SEVEN」の編集ディレクター。02年~04年博報堂刊行「広告」編集長。04年本屋大賞立ち上げに関わる。現NPO本屋大賞実行委員会理事。06年既存の手法にとらわれないコミュニケーションによる企業の課題解決を標榜し、クリエイティブエージェンシー「博報堂ケトル」を設立、代表に。09年から地域ニュース配信サイト「赤坂経済新聞」編集長。11年からカルチャー誌「ケトル」編集長。12年下北沢に書店B&Bをヌマブックス内沼晋太郎氏と開業。11年、13年、15年のカンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルの審査員も務める。
上岡 典彦(うえおか のりひこ)
資生堂 コーポレート コミュニケーション本部 広報部長
1964年香川県生まれ。1987年4月、資生堂入社。高知支店、横浜支店、広報室(当時)を経て、2009年第14代『花椿』編集長に就任。同誌のリニューアルに取り組み、資生堂創業140年、『花椿』創刊75年の2012年3月に新装刊させる。その後広報部に復帰し、2013年からコーポレートコミュニケーショングループリーダー、2015年4月から広報部長(現職)。2016年6月から日本パブリックリレーションズ協会副理事長・資格委員会委員長を務める。