—2016年11月にCEOに就任した2週間後には来日を果たすなど、日本市場を重視していると感じる。
2017年のMarketoの各国の収益を見ると、日本はアメリカに次ぐ2番目に大きな規模を誇るまでに成長している。日本でのビジネスを立ち上げから率いてきた福田(マルケト代表取締役社長の福田康隆氏)が、10月にアジア太平洋・日本のプレジデントに昇格したが、これは日本で成功を収めてきたモデルを他の地域でも展開してほしいと期待してのことだ。
—日本市場で成功したモデルとは、具体的にどのようなモデルを指すのか。
私たちが提供するエンゲージメントマーケティングプラットフォームのバイヤーであるマーケティング責任者について、深い理解をもとにした提案ができていることが成功の要因だと考えている。
日本のチームは企業においてマーケティングがいかに実行、運用されているのか、あるいは組織体制はどうなっているのかなどを理解し、ニーズに応える提案ができていると思う。
—なぜ今、マーケターがテクノロジーを活用する必要性が生まれていると考えているか。
日本は特に人やモノがオンラインでつながった世界が急速に拡大している、世界でも先進的な環境にある。この環境に向き合うには、従来の延長で多くの営業人員を雇い、より多くの人にアプローチしようとしても限界がある。
このように環境が変わってもマーケターは、顧客一人ひとりに人として向き合い、パーソナライズしたストーリーを伝えることに役割がある点は変わりがないだろう。ただ、そのオーディエンスが何億、何十億と大きく拡大している点は、仕事における大きな変化だ。だからこそテクノロジーを活用する必然性が生まれているし、それを支援するのがMarketoである。
—マーケターの中にはテクノロジー活用に対して、遅れを取っているのではないかと不安も抱えている人もいると思う。
その企業によって、あるいは同じ企業内でも地域や事業部によって活用の成熟度は異なるものだ。ただ、Marketoは成熟度のどのステージにあっても活用できる機能を提供している。
ちなみに、その成熟度のステージとは大きくは次のように考えている。カスタマープロファイルの理解、見込み顧客に関するデータベースの構築。Eメールを使ったパーソナライズしたコミュニケーションの実現。さらに、そうした活動を通じて顧客、見込み顧客のプロファイルをより精緻にしていく。そこまで成熟するとEメールだけでなくSNS、Webサイトもパーソナライズした取り組みへと進んでいくだろう。さらに進めばPC、スマートフォン、タブレットなど、多様なデバイスを使いこなすユーザーに対して、そのデバイスを使うシーンに適したストーリーを届ける取り組みへと進化していく。コミュニケーション手段とデバイスの組み合わせは無数にあるので、そこまで取り組みが進むと、AIを活用する必要性が出てくるだろう。
10月に新しい機能「Marketo ContentAI」を発表したが、これはAIを搭載したソリューションであり、複数のチャネルにわたり、対象とする各オーディエンスに最も関連性の高いコンテンツを独自の方法で予測し、マーケターがデータ中心のコンテンツマーケティング計画を策定する手助けをするものだ。
現在は、Eメールマーケティングが主流であるが、Eメールだけに依存していては未来がない。なぜなら私たちの世代はEメールを頻繁に使うが、下の世代はSNSやスナップチャットのようなアプリをコミュニケーションツールとして積極的に使っているからだ。Eメール以外のエンゲージメントの手段が必要となることは間違いなく、新しいコミュニケーションの手段、さらにその先にあるデバイスを含めた複数チャネルを使いながら、パーソナライズしたストーリーを届けることが必要になっていくと考えている。
私たちはこれからも進化するマーケターの方々の取り組みに応じて、常に新しい機能を開発・提供していくつもりだ。
—Marketoはエンゲージメントマーケティングプラットフォーム、さらにエンゲージメントエコノミーという概念を発信しているが、こうした考え方はどれくらい浸透したと考えているか。
まだ誰もが完全にその概念を理解するところまでは至っていないとは思う。しかしデジタル化が進んでも、デジタル化が進むからこそ、企業が顧客に対して一人の人として向き合い、関係性をつくるための努力が必要とされていくと考えている。
企業のマーケティング活動の対象になりたいと思う消費者はいない。一方で企業から一人の人として、エンゲージメントしたいと思われる対象にはなりたいと考えているはずだ。だからこそ今、企業がすぐに取り組むべきことはエンゲージメント戦略を描くことであり、見込み顧客に対しても既存顧客に対しても、ジャーニーの各部分において、どのように関係性を構築するのか、その戦略を立てる必要がある。
—Marketoとしては、自社のエンゲージメント戦略をどのように描いているのか。
私たちも2017年の始まりに際して、新しいエンゲージメント戦略を立てた。具体的には顧客とのエンゲージメントを可視化する指標として「Engagement Quotient」を導入している。
顧客満足度やカスタマーサポートの対応状況、さらに製品を日常的に活用いただけているかなどを把握し、「Engagement Quotient」として可視化。万一、スコアの低いお客様がいる場合には、例えばMarketoを使いこなしていただくためのトレーニングを提案するなど、働きかけを行うようにしている。
—Marketoユーザーの中には、顧客を対象とした活動だけでなく、求職者やビジネスパートナー、従業員など多様なステークホルダーを対象にしたコミュニケーションに使用しているケースも多いと聞く。
その通りだ。企業にとってエンゲージメント戦略が必要な対象者は顧客、見込み顧客だけではない。企業を取り巻くあらゆる関係者との間でエンゲージメントを構築していく必要がある。そうした活動に取り組んでいけば、CMOの役割は「Chief Engagement Officer」へと広がっていくだろう。そしてエンゲージメント戦略を企画し、実行するその役割はCEOに次ぐ、重要な役割だと言えるのではないだろうか。
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