2017年ベストセラー連発、箕輪厚介「売り方をデザインする編集力」

いま最も勢いのある編集者とも言える幻冬舎の箕輪厚介氏。会社員でありながら自らの編集室を立ち上げ、台風の目のように周囲を巻き込み、絶え間なくベストセラー本を連発している。いかんなく発揮される箕輪氏の「編集力」、そして「多動力」の源泉とは。

編集者の役割は“着火”すること

―「出版不況」が長らく叫ばれているなか、2017年に箕輪さんが手がけた本の多くが、ベストセラーになっています。いまの時代における編集者の役割は、これまでと変化していると感じますか。

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本の売れ行きが、編集者のネット力によって露骨に差がつく時代になったと感じます。これからは本をつくるだけではなく、ネットを駆使した売り方までデザインできなければなりません。いままではプロモーション手段は限られていて、新聞広告を出すか、テレビや雑誌で取り上げられるくらいしかなかった。だから、メディア関係者とのコネクションを持っている編集者がプロモーション力もあるとされていました。それが現在は、編集者自身がネットを通じて、お金をかけずに縦横無尽にプロモーションできる時代です。

堀江貴文さんの『多動力』はまったく同じ内容と装丁だったとしても、僕がつくるのと他の編集者がつくるのとでは、反響は大きく違ったと思います。まず、ゲラの段階で堀江さんのオンラインサロンのメンバーに読ませて、発売前からネット上に大量の口コミがある状況をつくり、発売と同時に「NewsPicks」や「東洋経済オンライン」といったWe b メディアでも『多動力』の大特集を走らせる。

Twitter上に溢れ出てくる感想をこまめに拾って拡散しながら、キングコングの西野亮廣さんや高城剛さんといったインフルエンサーも巻き込み、何事かと思うくらい「多動力」という言葉をバズらせました。

SNSの威力は大きいですが、一番難しいのは、最初に着火させること。僕自身はTwitterのフォロワーは6000 人とかなのですごく多いわけではないですが、着火する役割は編集者である自分が担うべきだと思っています。一度火がついてしまえば、ある程度安定した軌道に乗っていきます。

箕輪厚介
1985年東京都生まれ。2010年に双葉社に入社。女性ファッション誌の広告営業としてイベントや商品開発などを手掛け、雑誌『ネオヒルズジャパン』をプロデュース。2014年より編集部に異動し『たった一人の熱狂』見城徹、『逆転の仕事論』堀江貴文などを担当。2015年幻冬舎に入社した後、『空気を読んではいけない』青木真也、『多動力』堀江貴文、『人生の勝算』前田裕二などの話題作を作りながら、2017年には出版とウェブメディアとイベントをミックスした「NewsPicksアカデミア」を立ち上げる。またオンラインサロン「箕輪編集室」を主宰し、従来の編集者の枠を越え、無人島や美容室、ランジェリーショップなどを幅広くプロデュースしている。

そもそも本って無限にあるじゃないですか。本屋さんに行ったら山のように本があるし、生活必需品ではないから購入に至るまでのハードルがすごく高い。さらに言うなら、普通の人にとって読書はもう習慣ではない。本屋さんに行くのも、映画館に行くのと同じくらいに非日常な行為になっています。

実際に本屋さんに足を運んだとしても、同じジャンルの本が積み重なっている山があって、そのなかから自分が手がけた一冊を選んでもらうなんて、とんでもない奇跡のような確率です。ただでさえそれだけのハードルがあるんだから、ワーッと非日常なお祭り騒ぎのような演出が必要なんです。読者に「このお祭りに参加するために、本を買わなきゃ」と思わせるくらいの盛り上がりをつくることが重要ですね。

—そうしたプロモーションをするために、著者をはじめ周囲を巻き込めるのが箕輪さんの強みだと思いますが、とはいえ大物著者が多いなか、どのようにして関係性を築いているんですか。

僕が編集する本の著者とは、ある意味で戦友や悪友のような関係になることが多いですね。おそらく多くの編集者は、著者の機嫌をうかがいながら、10歩くらい後ろを歩くのが普通だという感じがあるけれど、僕は著者とはいい意味でフラットな関係でいようと考えています。

先日は『人生の勝算』の著者である前田裕二さんのトークイベントで、担当編集者の僕が聞き手だったんですけど、朝が早すぎたので遅れて参加したら、冒頭は前田さんが一人で喋っていました(笑)。終わった後も前田さんのサインを求めて列ができていて、そういう時に編集者は意味もなく横で寄り添ってペコペコしているんだろうけど、僕は用事があって途中で帰らせていただきました。他人の礼儀には厳しいので後輩がそんなことやったらぶん殴りますけどね。

そういう意味で言うと、フラットというより最低な編集者でもあるんですが(笑)、実質的に必要だと思うことはとことんやっています。前田さんとキングコングの西野さんと僕の3 人のLINEグループがあって、どうすれば本が売れるかという会議を明け方までしていますし、売れる手段があれば、それがどんな困難なものでもやり切ります。

要は、機械的な御用聞きみたいなことをやっていても仕方がない。そんなものは著者のためではなく自分の自己満足です。大切なことは、いい本をつくり、売るためには何が必要なのかと死に物狂いで考えて、実行する。そのためにペコペコすることが有効な手段だったら首が折れるまでペコペコしますよ。まあ、いずれにしても礼儀作法が重視される文芸とかの編集部に行ったら、僕なんて一瞬でクビですよ(笑)。

ただ結果的に、本を出した著者とは、単なる編集者を超えた関係になっています。見城(徹・幻冬舎社長)さんの本をきっかけに幻冬舎の社員になり、堀江さんのオンラインサロン「堀江貴文イノベーション大学校」では、編集学部教授を任せてもらっていて、ニューズピックスの佐々木(紀彦)さんとは「NewsPicks アカデミア」というサービスを立ち上げました。

でも最近は濃い関係が増え続けていって、キャパオーバー気味です。このままだと身体が持たないから、ぶっちゃけ、たまには信頼を失ったほうがいいかなと思うこともあります。だからより自分に正直に行動するようになっていますね(笑)。僕にマネジメント能力がもっとあれば人を使いながらうまく回るんですけど、そこは本当にまだまだです。

Text : 萩原かおり, Photo : 川嶌 順

……「『箕輪編集室』とは何か?」「自分が幻冬舎にとっての黒船になる」「名前が売れれば、本も売れる」「編集者はやっぱり最強の仕事」「見城徹氏や堀江貴文氏など著者たちの箕輪評」など、本記事の全文は『編集会議』最新号をご覧ください。

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