デジタルとアナログのハイブリッドが理想
一方で「デジタル活用に際して、特に他社のプラットフォームに依存しすぎてしまうと、アルゴリズムが変わっただけで売上が変動してしまうなどの外的要因による業績への影響が大きくなる」と村田氏は懸案も指摘する。「情報接点が多様化しても、一人ひとりのお客さまに一貫性のあるコミュニケーションをしていかなければならない。総合コミュニケーションが鍵となる。実現できる仕組みや、専門性のある人材獲得が課題」だと話した。
それを受け、ジャパン・プロフェッショナル・バスケットリーグの葦原一正氏は、「米国のNBAはデータ収集と分析がうまいが、キーワードは『ハイブリット』ではないか」と自身の考えを提示した。
林氏も「商品を購入するだけの機能であれば、便利なECプラットフォームの方がお客さまのメリットが多く、リアル店舗は負けてしまう。デジタルだけ、リアル店舗だけではなく、アナログとデジタル、人とAIやロボット、バーチャルリアリティとIoT、役割分担をして組み合わせる必要がある。葦原さんのハイブリットという言葉が腑に落ちた」と話した。
また、パルコ全国で開催される接客コンテストについても紹介。「ベイクルーズさんのショップが優勝することが非常に多い。買いたいものが決まっていない人たちに向けてのお店づくりを今後一緒にしていけたら面白いと思う。ノウハウを可視化し、ほかの人でも再現できるようにしていきたい」と村田氏に提案した。
消費量減少の原因は「人口減少」だけではない!?
また小売りの世界では「人口減少」は人材不足という問題にもつながっている。林氏、村田氏からは顧客満足を高める上で大きな課題という声が上がった。「人材不足という観点からも、今後はロボットをはじめ、テクノロジーで新しい価値創造をすることが不可欠だと考えている」(林氏)。
ナリス化粧品の横谷泰美氏からは、消費量の減少は人口減少だけでないという考えが示された。「ナチュラル志向によるメイクやカラー、パーマ離れが進んでいる。また化粧品の進化によって複数使用の必要がなくなり、消費量が減少してきた。またアトピーやアレルギーが原因で、化粧品が使えない人も増えたことも課題」という。
こうした状況に対して村田氏は、「美しくなりたい、エステで気持ち良くなりたい、といった気持ちは変わらないのではないか、カウンセリングをしっかりと行い、地道にやっていくのが結局は近道ではないか」と提案。林氏もまた、「綺麗になりたい、というのは、何かを実現したい、という思いがあるからだと思う。そのため、パルコに訪れる方たちの『綺麗になりたい文脈』のどこかと、ナリス化粧品さんとで接点があるかもしれない」と話した。
ナリス化粧品は、売上の7割を訪問販売が占めているという。商品のユーザーでもある7万人の販売員が“ママ友”を介して商品を紹介したり、イベントを実施したりし、店舗に足を運んでもらっているそうだ。そのため、「マーケティングは行いやすい環境にはあるが、Webで商品を売るということが既存のビジネスを荒らすことにもなりかねず、難しいという課題も抱えている」という。それを受け林氏は、「パルコの店頭データや、イーコマースデータと、ナリス化粧品さんのデータを交換しあうことで何かできるかもしれない」と提案した。
JAPAN CMO CLUB
https://www.advertimes.com/special/cmoclub/