【前回コラム】「【ワカテの方が、ワカッテる?】注目のU30インタビュー:lyrical school篇」はこちら
前回に引き続き、広告業界外で活躍する注目のU30にインタビューしていきます。今回は、現役美大生でありながらアパレル企業「ウツワ」の経営者でもある、ハヤカワ五味さんに、ICAワーキングメンバーであるマッキャンエリクソン折茂 彰弘がインタビューしてきました。
ハヤカワ五味さんといえば、「シンデレラバスト」というコピーで話題となった下着ブランド「feast」など、コミュニケーション的にも優れたブランディングを行っています。経営者、クリエイター、現役美大生など、さまざまな顔を持つハヤカワ五味さんが、コミュニケーションをどう考えているのかを聞きました。
ハヤカワ五味が生んだ「シンデレラバスト」というコピー
—最近はさまざまなメディアに出られていますが、この記事で初めてハヤカワ五味さんを知る人もいると思うので、まずはハヤカワ五味さんの経歴について伺いたいのですが、美大に入られた理由から教えていただけますか?
ハヤカワ五味:もともと高校生の頃から、自分でアクセサリーやプリントタイツを販売していたんですよ。そのときに、周りでも同じようにものづくりをしている方が何人かいたんですが、なかには私よりいいものをつくっているけど、それが売れていない方もいたりして。それを見て思ったのは、品物の見せ方や人からどう見られているかなど、いわゆる広告的な要素が大事なのかもしれないと。そこから広告の仕事に進みたいっていう気持ちが生まれました。当時はラフォーレ原宿に通い詰めてたこともあり、そこのポスターなどを見て、これをつくれるってすごいな、アートディレクターっていいなと漠然と考え、予備校に通い始めたっていうのがきっかけですね。
—高校時代から自由に制作活動をされていたということなのですが、そのまま個人でものづくりを続けるのではなく、「ウツワ」という会社を起業しようと思ったきっかけを教えてください。
ハヤカワ五味:最初は正直にいってそこまで起業の意図はなく、なりゆきに任せてという感じでした。だから社長業に強く憧れてたわけではなくて、むしろ会社って何なんだろうとずっと考えていました。というのも、「起業」って一つのツールでしかなくて、会社も一つの「器」でしかないと思ってるんです。その「器」に大事な意味があるということもあると思うんですけど、少なくともうちの会社の規模で、特に駆け出しの時期に関しては、私たちの中身を守ってくれる「器」的な意味しかないなと思っていて。だから、「ウツワ」という社名にしました。
—起業が目的ではなく手段だという考え方は素敵ですね! ここからはウツワのコミュニケーションについてお話を伺っていきたいと思います。早速ですが、「シンデレラバスト」って、言葉としての発明も優れていますし、とても広告的なアプローチですよね。
ハヤカワ五味:そう言っていただけると、とてもうれしいです。そもそもいわゆる「貧乳」、「巨乳」って言葉は、どっちも結構ネガティブだなと思っていたんです。「貧」って、まず、貧しいじゃないですか? なんで貧相だって言われなきゃいけないんだよ、みたいな感じ。「巨」も巨人の巨だから、そんなにいい意味ではない。だから別にラベリングしなくてもいいだろうって気持ちがありました。多分そういった言葉は、一種の「呪い」として機能してしまうんじゃないかと思っていて。「低身長」、「高身長」って、ただのファクトであって、そこに意思はないのに、「貧乳」、「巨乳」って言葉の中には、強い、しかもネガティブな意思が感じられるんですよ。だからその「呪い」が嫌だなと思ったので、別の言い方を探していたら、小さいサイズの靴を「シンデレラサイズ」というならば、ブラは「シンデレラバスト」でいいんじゃないかと考え、それをTwitterでつぶやいたら、メディアの方が使ってくれたんです。
だから、広告コピーをつくろうというよりは、「貧乳」という言葉の持つネガティブなイメージを変えようっていうのが、一番にありました。