ハヤカワ五味が一目置くコミュニケーション事例とは
—「シンデレラバスト」を含め、さまざまなメディアを通じてメッセージを発信し続けているので、普段からかなりインプットをされてるんじゃないかと思うのですが、どうやって情報を得てるんですか?
ハヤカワ五味:Twitterに流れてくる情報で、みんなが共通で話題にするものってあるじゃないですか。だけど最近は、それだけじゃインプットが足りないっていうのを痛感していて、意識的に雑誌や海外メディアとかに目を通すようにしています。読み込む必要はないと思うので、ぱっと読んで気になるところやこれは変だなって思う部分をチェックしたりとか。
インターネットの怖いところって、自分が編集者だということかなって。自分がほしい情報ばかりどんどん得ていくようになるから、一点集中型の天才が増えやすい反面、とても偏りやすい。でも、今の私に必要なこととして、別にいらないと思える情報でもあえて一回取りにいくということを意識的にやっています。
—そうやって幅広く情報のインプットをされているなかで、いま気になっているコミュニケーションの事例ってありますか?
ハヤカワ五味:そうですね、まずは私たち「ウツワ」の事業に近いところで、ショップ系の事例を一つ。ニューヨークに「STORY」っていうセレクトショップがあって、ほぼポップアップショップみたいな形なんですけど、月替わりで展開してくんですよ。たとえば、今回は「恋愛特集」みたいなかたちで。それ自体にストーリーがあるし、雑誌的であるし、「編集された店舗」っていうのがいいなと思って。紙の雑誌もとても魅力的でありつつも、「編集」っていう機能がすごいじゃないですか。それがショップにあると面白いなと思いました。
あと、いいショップをつくるには、それだけ予算もかかるので、単純に商品の単価を上げるか、スポンサーをつけるか、入場料を取るかなどが考えられます。だから、「STORY」みたいに雑誌的手法でショップ自体にスポンサー(広告)がつくのもすごくいいですよね。「STORY」を知った時に、新しさを感じました。
—雑誌的に編集してショップをつくっていくって、面白いですね。他にもそういった新しさや、今の時代っぽいと感じている事例はありますか?
ハヤカワ五味:インスタグラムは最近始めたばかりであまりよくわかってないかもしれませんが、「インスタ映え」っていう概念がそもそもなくなっていくのではないかと少しずつ感じています。ラーメン屋さんにおける「うまい、安い、早い」みたいなことと同じレベルで、これからは「インスタ映え」っていう価値観が“言わずもがな”になっていくのかなと。たとえば、今は「インスタ映えするイベントですよ」って表現で打ち出しているかもしれませんが、それって「このラーメン、おいしいですよ」って言っているのに近いと思ってて。「いや、わかってるから! どこが、どうおいしいのか説明してよ」みたいな感じじゃないですか。そのくらい「インスタ映え」が当たり前なことになってくるんじゃないかなって思うんです。
これもアメリカの事例なんですが、アイスクリームをテーマにした「MUSEUM OF ICE CREAM」っていうのがあるんですよ。ミュージアムと言いつつも、いわゆる「インスタ映え」するスペースが10個くらい連なった、写真を撮ることを前提にした展示会場みたいな感じ。すべてがめっちゃかわいいんですけど、そこではいろんな人が写真を撮って、インスタにアップしてるんですよ。今までは、目で見ることに価値が置かれていたと思うんですけど、写真を通して誰かがインスタで見ることに価値があって、それ自体がアート的というか、美術館的になっていてすごく面白い!
—私たちにとって「インスタ映え」って新しい価値観だけど、下の世代にとってはむしろ当たり前な価値観だってことですね。じゃあ、そんな「インスタ映え」が当然ななかで、「MUSEUM OF ICE CREAM」が他のイベントや施設と違うのはどんな点なんですか?
ハヤカワ五味:人が、いろんな角度から、その空間に入ったときに「画として成立する」ようになっているんです。たとえば、内部がボールのプールみたいになっていて、そこに飛び込み台があって子どもが乗れたり、そのプール側に浮輪みたいなのがあってそこに入ったりとか。一つの空間ではあるんですけど、写真をどういう画として撮るかで、かなり見え方が違ってくるっていうのが面白いと思うし、めっちゃかわいいんです。
何て言うんだろう……「材料」なんですよね! 人がいて、写真を撮るっていう行為があって完成する場。そこが面白いなって思いましたね。訪れる人をクリエイターにしてあげるというか。多分、本当のクリエイターの人だったら、なんらかその空間を完成した状態にしちゃって、逆にそこに参加できないと思うんです。だからある程度の自由度、余白をあえて残して、来る人の参加性を高めているところが、個人的に、今の時代っぽいのかなと思います。