SPIKES PR部門レポート「日本のPRと世界のPRは、日本のカレーとインドのカレーぐらい違った」

初めまして、電通の嶋野裕介と申します。普段は「#金曜日の新垣さん」とか「同棲解消ホケン」などPR・SNS起点のキャンペーンを作っています。

ところで、みなさんはインドでカレー食べたことありますか?3年前インドで先輩に高級カレーレストランに連れて行ってもらったのですが、めちゃくちゃ美味しかった!(インドなのにお腹も痛くならなかったし)。でもそれ、私の知ってるカレーじゃないんですよ。日本のココイチのカレーとはまるで違う。“味の方向性”とかのレベルではなく、食べ物のジャンルが違う。

私が参加した今年のSPIKES PR部門の審査でも、まさに日本と海外の違いが明確に出ました。それが面白かったので、その情報と今後の対策をシェアさせていただきます。


日本と世界のPRの違いを感じた3つの「視点」
1.Idea < Result ? 視点
2.日本人のリザルト視点
3.Earned 視点

1.Idea < Result? 視点

そもそも、PR部門の採点基準の内訳を話すと、
アイデア20%、戦略30%、実行20%、リザルト30%なんです。

これ聞いてどう思いますか?(10秒考えてみてください。)

そう、「アイデア」の割合が一番低いのです。
私が働く広告代理店業では、クリエーティビティが最も重視される業界でもあります。だからこそ、アイデア至上主義。
似ている案はパクリだと攻められ、商標チェックなどをかけて類似を確かめ、オリジナルのおもしろさを追いかける会社です。
その「アイデア」が一番低く評価された部門、それが「PR」です。

例えばゴールドを獲った#Beatmeを例にして考えます。

UN Women「#Beatme」 (Gold)

国連が行う女性への暴力撲滅キャペーンに連動してパキスタン国内で展開されたキャンペーン。直訳すると「私を叩いて」という意味だが、登場するのはパキスタンで様々な分野で成功を収めた女性たちで、「Beat me」が「私を打ち負かしてみろ!」とのダブルミーニングで使われていることが明かされる。

これは、パキスタンの女性の地位向上のためのキャンペーンです。
活動についてはもちろん素晴らしいのですが、キャンペーンとしてどう思いますか?

私は正直ショートリスト以下だと思っていました。
だってアイデアはものすごく普通だから。言葉遊びのキャンペーンであり、映像も普通。審査中も「こんなのアドの世界だと20年前からあるし、俺なら5分でつくれる」とか主張しました。
でも最後の最後はゴールドまで上がりました。

なぜか?
審査員チームの女性割合(7人中4人)や、審査員の多くがAd agencyのPR部門ではなくPR agencyから選ばれたという理由もあるかもしれません。
でも、一番の理由はアイデア以外の部分がよく作られていたから。
二重の意味をもつ「#Beatme」という言葉をキャンペーンの真ん中におき、
インフルエンサー(これもPRにとっては大事な手法)たちが広める戦略。
男女差別が激しいパキスタンで堂々とこれを実行し、そのキャンペーン自体を国連でも取り上げさせた実行力。そしてその影響でパキスタンの国内でいろんな新しい取り組みがはじまったこと・・・

つまり、アイデアはイマイチ(失礼しました!)でも、他の要素(特にリザルト)が高かったことが評価されてのゴールドです。

当初はそれに憤慨していた私も、いまは冷静に「それはそれでアリかも」と思えて来ました。だってクライアントが求めているのって「アイデア自体」ではなく、それがもたらす「結果(リザルト)」なのですから。そういう意味では、遊びや祭りだ言われる広告祭の中で、かなり健全な部門だったと思います。

次ページ 「2.「日本人のリザルト」問題」へ続く

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