肉との戦いに、負けっぱなしではいられない
—魚は美味しいし、栄養が豊富なことは多くの人が知っています。しかし、日常では値段の面でも、つい精肉を手に取りがちになってしまう傾向があるかもしれません。
山本:魚に関しては、産業がガラパゴス化していると考えています。以前はイワシや鯵などが他の食材に比べても、とても安く売られていました。だから「安い」というフレーズが、何よりの消費者にとってのメリットだったはずです。安さ以外の情報は、魚屋の店頭で伝えればいいことでした。
ところが、今では精肉の流通が整って、魚よりもはるかに安い値段で売られています。それにもかかわらず、現在でも鮮魚売り場で見かける売り言葉はまず「安い」そして「旬」、「栄養豊富」などです。すでに安さが一番の魅力ではなくなっているにもかかわらず、旬の魚がおいしい理由や、豊富な栄養を持っている時期などの情報が漁師さんや卸の方から先に伝わらなくなっています。
小倉:しかも、流通している魚は、加工品や切り身まで含めると全部で200〜300種類くらいあり、多様な市場を形成しています。しかし、消費者が知っている魚は鯵やサバなど20〜30種類くらいではないでしょうか。
魚の流通には、「四定条件」とよばれている仕入れ方があります。これは「定時」「定量」「定額」「定質」のことで、この4つが満たされることで安定供給ができるのです。いつでも同じサイズで、説明のいらない誰もが知っている魚を常に店頭に置くことが量販店の一般的なアプローチの方法になります。だからマンボウやオコゼといった魚は、飲食店では扱えても、スーパーで扱うことが難しくなっているのです。
「未来のお魚屋さんプロジェクト」のこれから
—プロジェクトが目指す未来について教えてください
沖本:プロダクションのなかには、クライアントの意向を、ただそのまま反映させるだけの会社も多くあります。しかし我々は、クリエイティブのアイデアやコミュニケーションの設計自体を考えて、社会や企業が抱える課題に対して解決策を提案することができます。
例えば当社では現在、山岳事故の減少を目指すサービスの提供も行なっています。ほんの小さなIoTデバイスを持って登山をするだけで、登山者自身の行動記録としてはもちろん、家で待つ家族や山岳管理者がリアルタイムにデータを確認することができます。また、有事の際にHELPボタンを押せばHELPコールを送信し、事前にした緊急連絡先へ通知することが可能です。
そういったテクノロジーを用いて、生活をアップデートさせて、これまでのクリエイティブよりも一段上の結果を目指しています。今回のプロジェクトで言えば、水産業界にイノベーションをつくる未来を切り開いていけたらと思っています。我々の持つテクノロジーで、料理をしたあとの「いただきます」から「ごちそうさま」までの豊かな体験をお手伝いしていけたらいいですね。
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