インターフェイスが変わればライフスタイルも変わる
しかしながら、デバイスの変化は、単純に形態が変わったことを意味するだけではありません。それはインターフェイスの汎用性の進化でもあり、また使用環境のライフスタイルの変化を伴うものです。
例えば、インターネット技術が携帯電話と一体化することで、それまで30代男性を中心としたビジネスパーソンの仕事用ツールだった携帯電話が、女性や学生のコミュニケーション手段にもなりました。iPhoneによって普及したスマートフォンで、ターゲット層がさらに子供や高齢者にまで広がりました。
音声認識を持つスマートデバイスは、その意味でさらにユーザーを拡大します。何しろ文字が読めなくても音声で指示できるのですから、リテラシーの障壁も少なくなります。
使用状況の面でも、多くのメリットがあります。特にハンズフリーを求められる状況でも役立つでしょう。車を運転しながら、料理をしながら、子供を抱えながら、など。
そして実は、テキスト入力よりも多くの部分で手間が省けます。何しろブラウザを立ち上げて、キーボードを打つ必要がないのですから。また、テキストは人間の視覚やアテンションを必要としますが、音声は行動しながら指示がしやすくなるので、忙しい時に便利です。
日本でスマートフォンが重視されるのは、電車など公共交通機関で移動することが多いという環境もあります。音声を出すことができず、テキスト入力の方が他人に迷惑をかけることもありません。アメリカはむしろ車で移動することが多いので、音声でのやり取りが便利です。また、スマートスピーカーが家の中での設置を前提として開発されているのも、自宅内でスマートフォンを使って家族とメッセージを送り合う人は少なく、声でやり取りするのが自然だからです。
今年のカンヌライオンズで受賞したバーガーキングのテレビCMは Googleの検索を意図してつくられたものでした。「OK, Google」から始まるテレビCMは、昔の「続きはWebで」で終わる広告によく似たイメージですが、スマートフォンがテレビ視聴時に気になる内容を検索するセカンドスクリーンの役割を果たしていることを、うまく捉えた広告です。
今後は、このようなタイプのマーケティング手法が試されていくでしょう。