第55回「宣伝会議賞」中高生部門では、都内の中学校・高等学校を対象に「出張授業」を実施しています。「キャッチフレーズを書くのは初めて」「そもそも、キャッチフレーズって何?」──そんな皆さんに向けて、キャッチフレーズの考え方・書き方の基本をお伝えしています。今回の講師は、中高生部門の審査員長を務める、コピーライターの渡辺潤平さん。都立国際の約40名が、「伝える」技術の基本を学び、キャッチフレーズづくりにチャレンジしました。
大切なのは「何を言うか」と「どう言うか」
キャッチフレーズを書くときに考えるべきことは、実はたった2つしかありません。それは、「何を言うか」と「どう言うか」。キャッチフレーズに限らず、「言葉を書く」作業はすべて、このルールに基づいて行われています。何か議論をするときも、必ずこの順番で考えていると思いますよ。
キャッチフレーズを書くというと、難しいことのように捉えてしまうかもしれないけれど、友だちとおしゃべりするとき、LINEでやりとりするとき、学校の課題レポートを書くときと、まったく同じ頭の使い方で、書けるものなんです。
大切なのは、自分が今「何を言うか」「どう言うか」のどちらを考える段階にいるのか、きちんと自覚すること。どんな言葉を考えるときにも共通するルールなので、覚えておいて損はないですよ。
例えば、このペットボトルの水の広告をつくるとしましょう。まずは、この水について「何を」言ったらみんなに素敵だと思ってもらえるのか考えます。ちょうどいいサイズなのか、インパクトのあるデザインがいいのか、味がいいのか……ほら、少し考えただけで、サイズ、デザイン、味と3つの「何」が出てきました。
そうして、3つの中でも味を伝えようと決めたら、次はその味を「どう」表現したらいいか考える。「おいしい水です」と言うのは、正しいけれど当たり前のことで、コピーではありません。「女子高生の涙のような水です」は全然おいしそうじゃないけど(笑)、こうやってちょっと言い方を変えるだけでも、周りがザワつきますよね。そうやって「どう」の部分を考えていきます。
そして「どう言うか」を掘り尽くしたら、また「何を言うか」に戻る。「何」の部分を変えて、「どう」をまた考えるんです。これを延々と繰り返しながら、「何」を「どう」言葉にしたら人のハートをキャッチできるか、突き詰めていきます。これがコピーを書くということ、言葉を生む作業のすべてです。