「正しい」では人は動かない。「楽しい」言葉を生み出すには?
「何を言うか」「どう言うか」を考えていくにあたって知っておいてほしいのは、人のハートをキャッチするのは、「正しい」言葉よりも「楽しい」言葉だということ。
僕が通っていた高校は厳しかったので、「遅刻はだめだ!」とか「上履きのかかとを潰して履くな!」とか、色々言われながら過ごしました。そういう先生の言うことって、大体正しいんです。でも、みんな言うことを聞かないし、反抗したくなるんですよね。
でも例えば、「履き潰した上履きって、クサそう」と言われると、「かかとを潰して履くのはやめようかな…」と思うかもしれませんよね。これって、「正しい」から「楽しい」に移った瞬間に、人の気持ちが動いたということだと思うんです。
正しいことを正しく言うんじゃなくて、いかに楽しく人の気持ちを揺さぶるかってことが、キャッチフレーズを考えるときにもとても大切です。なるべく楽しい言葉を書くことで、伝えたいメッセージが多くの人の頭の中にインプットされる。それが、コピーの醍醐味かなと考えています。
「楽しい」言葉を書くためには、いつも色んなことにアンテナを張って、色んなことを知っている必要があります。例えば、「卍(ウェーイ)」とか「こりってる(孤立してる)」とか、僕には耳慣れない若者言葉も、意味を聞いてみると結構面白い。見たことがないものを見たり、食べたことがないものを食べたり……そういう好奇心を持つことで、色々なことが自分の中にどんどんインプットできます。
好奇心は、決して絶やしてはいけない燃料です。優秀なコピーライターやCMプランナーは、好奇心が強い人ばかり。言葉を豊かに扱いたければ、まずは色んなことを知るのが大切です。
だから、コピーを書くときは、対象の商品をまず一度使ってみるようにしています。アプリだったらインストールしてみるし、食べ物だったら食べる。マスカラもやってみるし、売っている店にも必ず行きます。ブラジャーだって、自分は体験できないけど、妻に聞くことはできる。そうやって自分にできるギリギリのところまで、その商品に近づく努力をします。ちゃんと商品に向き合って、「知りたい」気持ちを満たしていくことは欠かせません。