「ハレ」の要素が強い、ケンタッキーの購買体験を可視化
塩谷:ケンタッキーは、「ハレの日」需要が大きいです。誕生日やお祝いがあると、みんなでバーレルを囲んでワーと盛り上がって写真を撮るという習慣が自然と生まれていて、そこには必ず笑顔があります。
藤崎:たしかに、ケンタッキーフライドチキンと家族や友達の笑顔は、ごく自然に想像できます。
塩谷:そうした笑顔が溢れる取り組みをもっと重視したいと考えたのです。もともとソーシャルメディアへのオーガニックな投稿もありましたし、公式アプリではカメラ撮影機能も提供していたのですが、ロイヤルユーザー向けのサービスは強調できていませんでした。もう少し「消費」段階を含めて、お客さまとのコミュニケーション戦略を練り直したいと考えて生まれたのが「カーネルクラブコミュニティ」というわけです。
もちろん購入の「検討」段階の投稿もありますが、どちらかというと「消費」段階から購買のリピートにいたる購買後のタームに重きを置いています。今後、私たちにとって重要なのは、「顧客時間」という概念を基にしたタッチポイントを、もっと増やしていくことだと考えています。
藤崎:お客さまの行動を、「検討-購買-消費」という一連の流れで捉える「顧客時間」という考え方は重要ですね。特に購買後にあたる「消費」段階を把握して、次につなげようという考え方には共感できます。
塩谷:TwitterなどのSNSでは、ファン同士がつながっていることもあると思うんですが、私たちは可視化できていませんでした。そうした観点からも「カーネルクラブコミュニティ」は有効だと思っています。
ケンタッキーフライドチキンは、ファストフードというカテゴライズの中でも、レストランクオリティを大切にしています。その特徴として、サービスも消費の段階も、「絵になる瞬間」が挙げられます。
そこでInstagramのアカウント運営も行っており、オーガニックなファンの広がりや盛り上がりもあります。しかし、ご存知のようにInstagramは写真に特化したコミュニケーションですので、もっと「消費」段階以降で積極的にお客様の声を集めたいと思った時に、ファンサイトという形にすることが有効だと考えたのです。
藤崎:やはり、外部のSNSプラットフォームを使うのと、自社会員のコミュニティをつくるのは、社内にとってもファンの方にとっても意味合いが違ってくると思います。また、「顧客時間」の把握は重要だと思いますが、なかなか御社のように新しい取り組みができない企業が多いのが現実だと思います。
塩谷:当社の場合は、「顧客時間」の提唱者であるオイシックスドット大地でマーケティングを統括している奥谷孝司さんのお力をお借りしつつ、社内への理解促進を行ってきました。幸いマネジメント層の一部からも、お客さまの「検討」や「消費」段階の把握が課題であるという指摘がされていたこともあり、スムーズに実現できたのではないかと思っています。
やはり、「買う前」の段階と、「買った後」の段階がないと、お客さまの活動を次に続けていくことはできません。例えば、売れたとしても、買って頂いた後の体験が悪ければリピートには繋がりません。また買う前の情報提供が悪く不備があれば、お店に行くという行動が起こせていないことが想定されます。
大事なのは、むしろ購買の前後のケアであり、やはり「顧客時間」をしっかり考慮すべきですね。
藤崎:いいお話をお聞きしました。その通りですね。