ハロウィンがなぜ盛り上がるのか? 流行を読み解くための3つの視点

ハロウィンの流行を読み解くための3つの視点とは?

ハロウィン流行の背景にある、仮説的な3つの視点を紹介します。

1.ハロウィンの「祭り」性

もともとの出自にも関係しますが、やはりハロウィンの醍醐味はその「祭り」性。祭りは日常と異なる空間をつくりだす機能を有しています。また、現代のハロウィンには、日本が日常的に規範を守ることが強く求められることへの反発として、無礼講的な熱狂が垣間見えます。

そして、ハロウィンにはより積極的に「いつもとは違う自分の提示」=変身願望の充足という側面があるでしょう。それが2つめの視点につながります。

2.ハロウィンの「盛り」文化

オリジナルのハロウィンが兼ね備えていた祭祀的なコンテクストを離れて、日本では一人ひとりの変身願望を叶えるためのイベントになっています。

そして、重要なのが一人ひとりの「盛る」ための工夫、そこに差し込まれるカスタマイズや自己表現の要素だと言えます。日本のハロウィンがファッショナブルな色彩を帯びているのは、このような下地があるからだと感じます。

いまや1年の中で最もビジュアルに凝ることができるイベントだと言ってよいでしょう。

3.自己表現のためのパサージュとプラットフォーム

最後に、ハロウィン的なものが表出される「ステージ」の存在に触れておかなければなりません。これが現代的なハロウィンの条件になるからです。そのステージを、僕はパサージュとプラットフォームという言い方で表現します。

パサージュとは繁華街の中の歩行者専用通路を意味し、人々が集まり視線を交わしあう空間を指しています。思い思いのコスプレで街に繰り出す生活者は、パサージュで交わされる一回性の視線のダイナミズムを楽しんでいると言えます

そしてそれと同時に、そこでの模様を記録しておくためのプラットフォームが現代では発達しています。つまりInstagramをはじめとした一連のビジュアルコミュニケーションのためのSNSです。この時期になると、ハロウィンに関する多くの写真や動画がシェアされます。②で述べたように、ハロウィンは現代日本で最もビジュアルコミュニケーションに適したイベントです。

プラットフォーム上にシェアすることで得られる「いいね!」のストック、そしてパサージュでの視線の一回性。あるいは友だちからの顕名的な評価と、多くの人に注目される匿名的な評価という対比性も重要な要素です。この両者をともに味わうことができるダイナミズムが、ハロウィンの熱狂の根底に潜流しているのではないでしょうか。

著書でも詳述したのですが、SNSを使いこなすユーザーにとって–特にその中でも若年層において–SNSでのシェアこそが、その人のアイデンティティを規定します。

現代は、発信する生活者の時代。シェアがはかどる要素が“全部入り”のハロウィンが盛り上がるのは、必定のことではないでしょうか。

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天野彬
天野彬

1986年生まれ。東京都出身。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。 2012年株式会社電通入社後、マーケティング部門、新規事業開発部門を経て、2014年から電通メディアイノベーションラボにて研究/執筆/コンサルティングの業務に携わる。専門領域はスマホユーザーやウェブサービスのリサーチ。
主著にインスタグラムをはじめとするSNSのトレンドを分析した『シェアしたがる心理~SNSの情報環境を読み解く7つの視点~』(2017年、宣伝会議)。その他、『情報メディア白書2016/2017/2018』(ダイヤモンド社、共著)、『二十年先の未来はいま作られている』(2012年、日本経済新聞出版社、共著)。経済番組でのコメンテーターや宣伝会議、日本マーケティング協会、全日本広告連盟、アドテック東京などでスピーカーを多数務める。「Forbes JAPAN」オフィシャルコラムニスト。

天野彬

1986年生まれ。東京都出身。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。 2012年株式会社電通入社後、マーケティング部門、新規事業開発部門を経て、2014年から電通メディアイノベーションラボにて研究/執筆/コンサルティングの業務に携わる。専門領域はスマホユーザーやウェブサービスのリサーチ。
主著にインスタグラムをはじめとするSNSのトレンドを分析した『シェアしたがる心理~SNSの情報環境を読み解く7つの視点~』(2017年、宣伝会議)。その他、『情報メディア白書2016/2017/2018』(ダイヤモンド社、共著)、『二十年先の未来はいま作られている』(2012年、日本経済新聞出版社、共著)。経済番組でのコメンテーターや宣伝会議、日本マーケティング協会、全日本広告連盟、アドテック東京などでスピーカーを多数務める。「Forbes JAPAN」オフィシャルコラムニスト。

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