ヤングスパイクスPR部門初代ゴールドは「1ビジュアル・1コピー発想」で勝ち取った

世界各国の代表がシンガポールに集まり、アイデアを競い合う30歳以下限定のコンペティション「ヤングスパイクス」。そこに今年、PR部門が新設されました。その初代ゴールドに輝いたのは、日本代表ペア。TBWA\HAKUHODO 関谷“ANHELO”拓巳さんと、博報堂 谷脇太郎さんは、2016年のヤングカンヌに続き、2度目の代表選出となりました。2016年の本戦惜敗からの紆余曲折、そして2年間にわたる挑戦から得た学びを、2回にわけてレポートします。

TBWA\HAKUHODOのアネーロ関谷です。
アネーロというのは本名ではありませんが、カタカナで目立つから使っています。

毎年9月に開催される、アジア地域最大級の広告祭「スパイクスアジア」。この中で行われる若手向けコンペ「ヤングスパイクス」のPR部門に日本代表として参加し、ゴールドを受賞しました!

ペアの谷脇太郎と共に勝ち取った受賞までの道のりをレポートするとともに、受賞に近づく上でポイントになったことを考察してみたいと思います。

2年連続でPR部門に挑戦した理由は「必勝法がある(気がした)」から

ヤングスパイクス挑戦への道のりは、2016年のヤングカンヌ挑戦に始まります。
入社2年目の終わり、少しずつ広告をわかったような気になっていたタイミングに、力試し程度の気持ちで応募した、ヤングカンヌPR部門の国内選考。こちらでまさかのゴールドをいただき、日本代表として本選に参加してきました。しかし、本選ではボロ負け……。その時のことに関する記事はこちら(負けた直後、落ち込み絶頂時のインタビューです)。

ヤングカンヌPR部門を分析 — 王道のメッセージが選出される傾向 | AdverTimes(アドタイ)

今思えば、当時はコアアイデアのクリエイティビティばかりを考えていて、「PRらしさ」という視点がどうしても欠けていた気がします。

国内予選と本選を通じて、PR部門は他部門よりも「本当に社会課題を解決できるかどうか」ということが重視されているように感じました。他の部門ではオリエンに応えきれていなくても、クリエイティビティを重視されて受賞しているものが散見されます。それは審査員の好みにもよるもので、ある意味“博打”のようなもの。しかし、「Behavior change」を起こすかどうかというのは、誰の目にも明白です。

それはつまり、PR部門には“必勝法”があるということだと思いました。

だからこそ負けてしまったことが悔しかったのです。雪辱を果たすべく、翌2017年もヤングカンヌの国内選考に挑戦しました。

課されたお題は、「移民・難民への差別を軽減するPRキャンペーン」。

過去の受賞作をスタディしていると、特定のターゲットの感情を突き動かし、「これなら行動変容が起きるかもしれない」と思わせられるアイデアが多く受賞しているように感じていました。「突飛な発想より、効くかどうかが重要」という審査傾向は変わらないだろうと踏んで、それに応える強いアイデアをと思いプラニングしていきました。

私たちが提出した案は「MIGRANT TRANSFUSION」。

世界移民デーに、移民・難民の血液を輸血に使用するという施策です。血液は人種や宗教に関わらず、どの人に輸血しても医学的に問題はありません。しかし、差別意識のある人たちはこれを嫌がるはず。「安全なのに、どうして嫌がる必要があるのか?」という切り口で、賛否両論を巻き起こそうという狙いです。

さらに、移民デーから数カ月後、この輸血を受けた患者の健康状態を検査してニュース化。医学的に問題がなかったことを確固たるデータで公表することで、移民の血液を嫌がることは差別以外の何物でもないことを伝えていきます。

国内予選の結果は、惜しくもシルバー。
悔しさを抑えてゴールドの案の内容を聞いたところ、私たちの案に足りなかったのは「フィジビリティ」ではないかと思いました。いくら医学的に問題ないとしても、医療というセンシティブな現場で炎上が起こるかもしれない施策を、一体どこの病院で実施できるのか。もちろん質疑応答には徹底的に理論武装して答えましたが、ゴールドの案は、アイデアの太さもさることながら、圧倒的に実現可能性があるように見えました。正直、完敗でした。

「今年はカンヌに行けない……」と仕事も手につかず落胆していたところ、「今年からヤングスパイクスPR部門が新設されるので、シルバーをその代表に」との連絡が入りました(マジで運がいい。最高。)。

後から聞いたところ、「去年の実績も考慮して」とのことで、今度こそ審査員の方々の期待に応えたいという気持ちになりました。こうして私たちのヤングスパイクス挑戦が決まりました。

次ページ 「本選参加までの準備「日本代表非公開練習」」へ続く

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