クライアントを選ぶ5つの基準
2014年にバドワイザーのスーパーボウルCM「Puppy Love」を手がけ、2019年ワールドカップに向けてはコカ・コーラ社のクリエイティブ戦略を担当。Beats by DreやGoogleなど注目企業の仕事も数多く手がける一方、コンバースやジョニーウォーカーをはじめ、Anomaly創業以来、長い関係を結んでいるクライアントもある。
「私たちはクライアントと成長を共にしていくために、いくつかの選定基準を設けています」とDamassa氏。選定基準は、第1に「お互いに敬意を持てる企業」であるということ。AnomalyはTBWA出身のスタープレイヤーたちが立ち上げたということもあり、クライアントとの人的ネットワークは広い。だからこそ、年間に参加する競合プレゼンの数は絞り、短期的なプロジェクトの付き合いではなく、中長期的にパートナシップを組める相手かどうかを、事前にお互いに確認している。
その上で第2に「クライアントの製品が本当にいいもので、心から『売りたい』と信じられる」ことを挙げる。第3・第4には、クライントの仕事に対する姿勢が「野心的であること」「ビジネス課題を解決することに真剣であること」を求め、そして第5に「そのクライアントワークが、Anomalyにとって財政的にもクリエイティブな意味でも、知的にも価値がある」ことを重視している。
シニア・タレントとの協業と、企業文化を守る工夫
名だたる企業の広告・コミュニケーションを手がけ、ジョイントベンチャーを立ち上げて新ブランドや新事業を創出し…と、極めて高い生産性を発揮するAnomaly。組織体制や企業文化には、どのような工夫があるのか。
「社員の3割はストラテジストです。クリエイティブのスタッフも大勢いますし、プロダクション機能も内製化しようとしています」(Damassa氏)。中でも飛び抜けた生産性を発揮するのが、彼らが「Anomaly」と呼ぶ、イレギュラーな形で採用されているシニア・タレントだ。
特定のクライアントの仕事をするためだけに採用され、週に3回ほどしか出社しない、高いスキルと経験を持つプロフェッショナルが複数名所属している。高い専門性を持つ外部人材と協業することで、内部のリソース不足を補っているわけだ。
こうした取り組みは一方で、企業文化を破壊するリスクを招く可能性がある。Anomalyは企業文化の維持を非常に重視しており、彼らが「DNA」と呼ぶ社内広報・教育組織では、週に一度創業者によるスピーチを行うほか、世界7拠点のベストプラクティスを共有するなどしている。
Damassa氏は急成長・急拡大が企業の「らしさ」を損なうリスクにも言及した。「Anomalyでは、毎年2桁の成長をマイルストーンとしています。しかし急拡大が続けば企業文化を損なう恐れがある。だから、2年連続で2桁成長を達成したら、次の1年は成長がなだらかになるようコントロールして、組織を落ち着けているんです」。
視察を通じて受けた印象は、極めて力強いリーダーシップと経営センス、明確な理念の3つによって成り立っている企業であるということ。自社の経営戦略、クライアントに提供する独自性の高い戦略、ジョイントベンチャーを成功させる戦略……すべてに神経が行き届いた、抜け目なさが光る。
収益モデルの改革が進み、ジョイントベンチャーの収益化も事例を積み重ね、ナレッジが確立されてきているように見える。Facebookと時を同じくして生まれた米国広告業界の革命児の動向に、今後も注目が高まる。
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