次に映像をつくる人たちにバトンを渡す
髙崎:僕が好きな福部さんのCMは、カロリーメイト「mate」篇。特にいいと思うのは、心の声で会話が成立しているところです。お互いの信頼関係が前提に匂うし、このふたりの中だけでわかっていることをこっそり見せてもらっている感じがする。
福部:なるほど…。僕は髙崎さんのように映像の経験が豊富ではないので、そのような目線で考えたことがありませんでした。実はこれ、「なんとなく心の声の方がよくない?」という感じで決めています。このCMのキーワードは「底力」だったので、あのときよりまだましっていう“あのとき”が底力で、あの部活のときよりまだましだ、という感じに見えれば、と思いました。
髙崎:いわゆるオフナレーションですが、こんな使い方もあるのかと。まだまだ僕らはやってないことがありますね。
福部:僕は髙崎さんがつくったCMでは、深津絵里さん出演の、KDDIのIP電話のCMが大好きなんです。遠距離恋愛になってしまった!でも、IP電話でたくさん話せるから全然平気!とミュージカル調で商品の機能やメリットを歌い上げる。この歌詞はプレゼン時に決まっていたのですか?
髙崎:企画するときに音楽から決めるパターンはすごく多いです。それはその映像の印象をほぼ決める大きな要素で、自分が自覚できてなかったやりたいことをその音楽が教えてくれることが多いんですね。見つけたらもうその曲しか聴かない。それで自分の感覚をそこに合わせてから、コンテを描く。この時は確か、ミュージカルのテンポ感を説明して、歌詞をプレゼンした記憶があります。
福部:髙崎さんのCM はいつも、出演している人がとても魅力的に見えますよね。
髙崎:タレントさんがやりたくないことをやらせるのが一番嫌いなんです。やっぱり「出てよかった」と思ってもらいたいし、そういうポジティブな力って、作品をよくしてくれると思っています。
福部:なるほど。あともうひとつ、僕が好きなのは、東北新幹線開業時のCMです。「言葉にしねーと伝わんねーぞ」ってセリフがグッときました。言葉としての鑑賞度が高い、素敵なコピーはたくさんありますけど、意外と一番遠くに飛ぶのは何もひねっていない言葉なのではないかと。
髙崎:確かに、ひねっていないものをひねっていない場所に置くとそのまま終わってしまうけれど、ひねっていないものをひねりのある場所に置くと飛距離が伸びますよね。それから卵の「きよら」のCMを見ると、福部さん、実は意外と可愛いものが好きなのかなと思ったり(笑)。
福部:はい(笑)。自分が親になって気づいたことですが、子どもは可愛いだけのものより、少し残酷なものが好き。うちの子どもも、スプーンで刺す場面を見て喜びます。
髙崎:ひとつの物事に対して、ふたつの感情が生まれると強いのかな、と思いますね。可愛いだけじゃない何かが、相手の心に深く刺さる。悲しい話であっても、笑いが入った方が、悲しさが倍増する。
福部:本当にそうですね。
髙崎:福部さんのCM はいつもロジカルにできているから、いつかやってみたくなるシステムばかりです。
福部:博報堂に伝わる名言で、「3つ真似してオリジナル」というのがあります(笑)。
髙崎:なるほど。融合させると進化しますものね。僕らの仕事って、蓄積のひとつでもあって。広告ってやっぱりいいものだ、機能するものだ、ということを続けていって、次の世代に渡していくというのも使命だなあと最近思ったりします。
福部:僕もカロリーメイトやカップヌードルのCMをやらせていただいた時には、自分が駅伝の走者になっている気持ちでした。とにかくいいものを作って、次の人にバトンを渡したいと思っています。
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