執筆者
・AIプランナーズプロジェクト AICO
電通 データ・テクノロジーセンター 福田宏幸
広告・コミュニケーションの企画制作の現場におけるAI活用を進めている、電通、博報堂プロダクツ、マッキャンエリクソンの3社が、各社の取り組み・研究の今をレポートするとともに、「AIはクリエイティブにどう役に立つの?」という疑問に答えます。
若手人材の発掘・育成を通じて広告クリエイティブの発展を願う、「宣伝会議賞」の特別企画です。
今後の更新予定(全6回)
第1回:博報堂アイ・スタジオ①
第2回:マッキャンエリクソン①
第3回:電通①
第4回:博報堂アイ・スタジオ②
第5回:マッキャンエリクソン②
第6回:電通②
前回の堤に続き、今回は私、福田宏幸が執筆を担当します。
前回は「AIコピーライター AICO」を活用した事例を紹介しましたので、今回は「Project AICO」が目指す、広告クリエイティブの未来について考えてみたいと思います。
「Project AICO」は、「AIコピーライター AICO」によるクリエーティブの可能性を追求するプロジェクトで、「AIプランナーズプロジェクト」の一部です。
どんなのものが出てくるかわからないから面白い。
2012年に、ディープラーニングと呼ばれるAIの技術が、画像認識のコンテストで圧倒的な成績を残しました(編集部注:画像をコンピュータに分類させ、その精度を競うコンペティション「ILSVRC」で、トロント大学ジェフリー・ヒントン教授が率いるチーム「SuperVision」がディープラーニングを活用し、2位以下に圧倒的な差をつけて勝利した)。
以来、AIブームが過熱していくわけですが、このディープラーニングという技術は研究者の間でも、なぜそれが上手くいくか、よくわかっていないところがあります。まるで人間の脳みたいに。
この「よくわからないけど、とても上手くいっている」というのが面白いところで、プロジェクトの一番の醍醐味がここにあります。いつもはダメだったとしても、時には人間には思いつかないようなアイデアを生むことがあるのです。
これからAIと協業し、キャッチボールを重ね、お互いを理解することから始めます。もちろん、まだまだ人間のほうが得意なことはたくさんありますが、常識や思い込みに捉われないことなど、AIが得意なこともある。人間とAIが補完し合うことで、新しいクリエーティブの可能性が開けるのではないかと思います。
目指せ、100万人に100万通りのコピー!
例えば、AICOはたくさんコピーを書くことが得意です。デジタルマーケティングの世界では、一人ひとりに、適切なタイミングで、適切なメッセージを届けるということが究極の目標です。ユーザーが100万人いたとして、人間なら100万通りのコピーを書くことは、とても不可能ですが、AIならできるかもしれませんよね。
実際、今年のカンヌライオンズのクリエーティブデータ部門では、フランスの有料放送CANAL+が行った、「AiMEN」というキャンペーンがゴールドを受賞していました。
ドラマ『ピウス13世 美しき異端児たち』のプロモーションのために行われた企画で、Twitterに汚い言葉を使って投稿した人に対して、ピウス13世のAIが自動でリプライして戒めるものです。
その数、なんと100万リプライということですから、まさにAIでなければ実現できない企画ではないかと思います。このように、TPOに合わせて適切なタイミングで適切なコピーを届けられるようになることがひとつの目標です。