トヨタやセブンなど大手企業でも同様
内部資源が不足しているからこそ、認識しにくい外部資源であるファンやアンバサダーを重視できるという現象は、トヨタ自動車やセブン‐イレブン・ジャパンのような日本を代表する大企業でも同じことが言えるようです。
例えば、トヨタ自動車が受賞した「86 Society」は、スポーツカーである86のオーナーのためのファンサイトで、ファン向けの掲示板やイベント情報はもちろん、峠の情報データベースなど、86オーナー向けの多様な情報を提供しています。
ある意味、プリウスやアクアのようなマス向けに大々的に広告を実施するような車ではではなく、スポーツカーファン向けの車だからこそ、地道な取り組みができたと言えるでしょう。
セブン‐イレブン・ジャパンが運営する「セブンスイーツアンバサダー」も、セブン‐イレブンというと通常はおにぎりやおでん、セブンカフェなどが連想されることが多く、スイーツのイメージが薄いという問題意識が始まりのきっかけだったといいます。
広告予算や人的リソースなどの内部資源が潤沢にある商品やカテゴリーであれば、大規模なキャンペーンや営業活動を展開できますから、その分、ファンやアンバサダーの口コミによる効果も相対的に印象が薄くなるのは当然です。
内部資源が少ないからこそ、戦略的に選択できる選択肢が少なくなり、そのひとつとしてファンやアンバサダーの重要性に気づくことができる、ということは言えそうです。
その延長で個人的に興味深かったのは、マクドナルドが受賞した「第1回マクドナルド総選挙」でした。通常、同社がキャンペーンを実施するのは、季節限定商品や新商品が中心で、レギュラー賞品を軸に大規模な企画を実施することは実は少なかったそうです。
しかし、マクドナルド総選挙においては「レギュラー商品でエンゲージメントを強化できないのか」というテーマをおき、あえてレギュラー商品を主役にするというアプローチに挑戦しました。
結果的に、勝利した「ダブルチーズバーガー」と「てりやきマックバーガー」が揃って公約を果たすというサプライズも奏功し、目標の6倍もの売上を達成することに成功したんだそうです。
マクドナルドの方々も、ここまで成功するとは思っていなかったそうで、ある意味、既存のレギュラーメニューのファンのエネルギーを強く認識することになった出来事だったとか。
マスマーケティング的に考えると、レギュラーメニューのキャンペーンは、一見話題性も低く、広告投資をするほどではないように見えるかもしれません。しかしレギュラーメニューだからこそ実はファンが多数いて、総選挙のような取り組みが盛り上がるとも言えます。
ファンやアンバサダーの外部資源としての価値をどう認識し可視化するかが、今後ますますポイントになってくると言えそうです。