【前回コラム】「Brexit問題がアムステルダムのクリエイティブ産業を活性化する?」はこちら
今、アムステルダムでは日本食が大流行しています。日本人の拠点となっているパリやロンドン、ドイツのデュッセルドルフは当たり前。ミラノやバルセロナ、ベルリン、そしてアムステルダムなどヨーロッパ各地にある日本食レストランまで、どこも大盛況です。アムステルダムだけでも最近オープンしたラーメン屋さんが5・6軒もあり、2店舗目の展開をしているところもあります。
実は筆者も、いくつかのお店の店舗開発やプロデュースなどのお手伝いさせてもらっていて、まさに今、来年春オープンに向けて絶賛デザインワーク中のプロジェクトがあります。
今回は筆者のそうした経験を通して、アムステルダムのクリエイティブシーンがいかに働きやすいかということをお伝えしたいと思います。
そもそもCMプランナーが、なぜ店舗設計をできるのか?
「越境」をテーマに連載しているこのコラム。ここで言う「越境」とは、国境のことばかりではありません。
自分の守備範囲、業務範囲を超えるという意味の「越境」でもあります。この「越境」はクリエイターとって必要なのではないかと常々思っています。かつてのように、メディアオリエンテッドな表現があまり機能しないということは、アドタイ読者の皆さんには釈迦に説法かもしれませんね。
クリエイターに求められるのは、クライアントや世の中の真の課題を抽出し、発見すること。
そして、広告制作は、1人でできることはないのではないか?というくらいチーム作業が多いですよね。コピー1本書くのも、他の人からチェックを受けたり、そもそもクライアントとの合意形成を得たりできなければなりません。そういう意味で、1人で完結する仕事はありません。広告制作はどんな仕事であれ、協働作業なのです。
課題を見つけ、協業作業で解決することが得意な我々クリエイターは、「越境」にむいています。CMプランナーであっても店舗設計ができますし、メニューの考案や、お店に来たお客さんの体験をデザインすることもできるかもしれません。
さらに、これまでの連載でも取り上げてきたようにアムステルダムには、この「越境」がしやすい環境が整っていると言えます。シェアオフィスなども含めて、クリエイターのエコシステムがかなり充実しているからです。
世界中からありとあらゆるタレントが集まっていて、しかもそうした個人がフラットに結びつくことができる素晴らしいソーシャル・キャピタルの蓄積もあります。
こうした環境が、元CMプランナーがアムステルダムで店舗設計やプロデュース、そしてお客さんの体験そのものをデザインできる理由なのです。