「72時間ホンネテレビ」が示した可能性を遠回りしながら考える

「AbemaTV」の視聴数は、本当に視聴率換算できるのか?

まず視聴率は人口あたりではなく世帯です。世帯視聴率なので母数を1億2千万人ではなく、世帯数で考えないといけない。最新の調査によると、日本には5747万7037世帯あるそうです(総務省の統計による、今年1月1日の数字です)。

私は日本の世帯数をざっくり5000万と憶えていたのですが、ここ数年ぐんぐん増えていました。ひとり世帯が増えているからだそうです。

そして番組の平均視聴率は、「面積」です。それを説明したのがこの図。

平均視聴率が10%という時、番組開始時には15%の世帯がその番組を見ていて、15分後には8%が見ていて、と推移していきます。いろんなデータを見ると、ずーっと同じ番組を見ているのは3割か4割程度で、視聴者は出たり入ったりするわけです。自分を考えても、そうですよね。そんなまじめに大人しく、番組の最初から最後までじーっと見ているなんて、そうそうないでしょう。

だから例えば、10%の番組の視聴率は5700万世帯のうち570万世帯がじーっと見ているのではなく、ずっと見ているのは200万世帯程度で、残りはもっともっとたくさんの世帯が激しく出入りしているわけです。それを均すと、平均視聴率が10%となるわけです。

そんな理屈がわかったとして、72時間番組の視聴数が7400万だった時に視聴率は?・・・計算できません。それだけでは、なーんにも言えないわけです。そもそも視聴数は端末の話でしょうから、世帯の話である視聴率に換算不可能なのです。

それでも、さらにしつこく食い下がります。「72時間ホンネテレビ」を見た人がどれくらいいて、何時間くらい見たのか。ものすごーくカンタンな調査をしました。

私は「ミライテレビ推進会議」という勉強会を運営しています。そのメンバーに、Facebookグループ上でアンケートを取りました。

その結果が、このグラフです。まず見たかどうか、見た人は何分くらい見たかを聞きました。

説明すると、ミライテレビ推進会議はメディアの変化に興味がある、テレビ局など業界の人たちと、IT関係の人たちが混在しています。新しいモノ好きな方たちですが、少々平均年齢が高いです。たぶん40代半ばくらい。でも30歳くらいの人もそこそこいます。あと悲しいかな女性が少ない。

そういう特殊なサンプルなので、その時点でちっともアテになりません。サンプル数も54人ぽっちです。なので、強引な推測をするアバウトなデータだという前提で読んでください。

メディアに興味がある人のわりには、まったく見なかった人が4割強います。見た人も5分以内から1時間以内まで合わせると23人で、やはり4割強。1時間を超えて見た人は7人です。でも40時間くらい見た、奇特な人が2人いました。

見た人の視聴時間の平均をざっくり出すと、256分で約4.2時間。1時間以内の人が多いのに、40時間の奇特な2名がずいぶん影響しちゃってますね。

見た人の回数を聞くと、やはり1回の人は少なく、10回以内が6人、20回以内が7人。それ以上の人はいませんでした。これを平均すると、おお9.9回!徳力—岡田説の10回とほぼ同じ!

さて、強引な推測値の材料は以上です。日本の世帯数は5747万7037である。ひとりの視聴回数はざっくり10回。ひとりの平均視聴時間が4.2時間。

これをもとに、「視聴率は面積である」という前提を元に考えます。わかりやすく、視聴率1%から考えてみましょう。

72時間の平均視聴率が1%になるには、日本の世帯数の1%が72時間ずっと視聴したのと同じ“面積“ということになります。そうすると、5747万7037×1%×72=3939万7032 。つまり、ホンネテレビを見た人の視聴時間の合計が、この数値に対してどうかを見ればいい。

7400万の視聴数の中身は、ひとり10回の視聴だったとする。視聴した人の数は740万人になります。その平均視聴時間が4.2時間なら、総視聴時間は3108万です。これはさっきの3939万7032より少ないですね。割ってみると0.78という数値が出てきます。つまり、1%の0.78、視聴率に換算したら0.78%という結果です。何度も言いますが、強引な推測値ですよ。

「72時間ホンネテレビ」の視聴率は0.78%、という推測。けっこういいところかな?ただどうでしょう。見た人31名の中で、40時間見た人が2人もいる。72時間のうち40時間って、なにそれ?夜を3回挟んでいるのに40時間見たって君たちおかしいよ。寝てないでしょう。

1時間以内の人が多くて、その中でも5分以内、15分以内の人が多い。ひとり平均1時間ってとこじゃないの?これで計算すると、視聴率に当たる数値は0.18%と出ました。ちょっと少なすぎかな?

さっきの0.78%と、いまの0.18%の間くらいかなと、これは感覚的な話です。まあどの道、信じちゃいけない強引な推測ですからね。

次ページ 「視聴率で地上波テレビと比べることに意味はない」へ続く

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境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)
境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

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