RYOT 創業者 Bryn Mooser氏
また『宣伝会議』2018年1月号(12月1日発売)には、レポートの総集編を掲載します。こちらも、ぜひご覧ください。
映像クリエイティブ集団のRYOTは2012年、災害や紛争地域のドキュメンタリー映像を制作・配信する企業として産声を上げた。最初のオフィスは、ハイチ地震(2010年)の爪痕が残る、とある病院裏のテントだったという。
2016年にOath(旧AOL)に買収されてからは、主にハフィントンポストのコンテンツを制作。広告制作を手がけるRYOT studio部門はカンヌライオンズやエミー賞など数多くのアワードに輝いている。
創業者のBryn Mooser氏は創業当時、ハイチに移住し地震の復興支援活動に取り組んでいた。「ハイチに関するメディアの報道はすべてネガティブなものでした。しかし現地で活動していた人々は皆、強い心と希望を持っていた。人々を分断するのではなく、コネクトするメディアをつくりたいとRYOTを立ち上げました」。
そのためRYOTは、ドキュメンタリー映像制作にARやVR、360 °映像などのテクノロジーを駆使している。まるで現場にいるような臨場感のある映像で、人と人をコネクトするのだ。
Oathのインハウスブランデットコンテンツエージェンシー部門となったRYOT studioでも、その姿勢は変わらない。「クリエイティブプロジェクトに取り組むとき、私たちは常に新しいテクノロジーに挑戦します。そうすればメディアの注目を集め、多くの人が話題にしてくれるからです」。
VRとは異なるARの活用可能性に注目
例えば、ジープの「PATH TO PURPOSE」は、自動車の広告に初めて360°映像を活用した事例だ。ベライゾンの「Virtual Gridiron」は、あたかも実際のフットボールコートでスター選手と対戦しているかのような体験ができるVRシステムで、これまでに5000人が体験し、SNS上で360万人以上がコメントした。
現在、RYOTがフォーカスしている技術はARだ。2017年のエミー賞候補である「LA Louvre」は、子どもたちがロサンゼルスにいながらにしてルーブル美術館の展示作品を楽しむ様子を映像化したものだ。
「VRは素晴らしい体験を創造しますが、ヘッドセットが必要なのがネック。ですからVRプロジェクトの場合、私たちはVRを体験する人々を主役に映像を制作し、共感を集めます。一方、ARはスマートフォンさえあれば誰でも使えて、マーケットが非常に大きい。最近では、スナップチャットなどを使えば消費者が自らARコンテンツをつくれるようになりました。こうした消費者発コンテンツの活用や、ARを使った人と人とのコミュニケーションに非常に関心を持っています」。
Mooser氏が今注目するテクノロジーは、「スマートフォンの次に来るもの」だという。「スマートフォンはいずれ、眼鏡やコンタクトレンズ型のウェアラブルデバイスに取って代わられると思います。ほんの5年後にはそうなるかもしれません。クリエイターはスマートフォンがない時代を考える必要があります」。