ファンの声を直接聞くために社長が全国行脚、ケンタッキーフライドチキンの顧客戦略

顧客の生の声を聞くことが大切

藤崎:塩谷さんにとっての顧客視点とはなんでしょうか?

塩谷:会社にいるとプロダクトやサービスについて、どうしても客観視できなくなってしまうことがありますよね。商品開発、CMのクリエイティブ、お店の見え方、コミュニティでの発言やメルマガの原稿ひとつとっても、どうしても「企業が言いたいこと」が前面に出てきてしまいます。

プロダクト側の人間になると、私たちが消費者としてサービスを受け取るときに感じる「これが良いな」「こういうことをされるのは嫌だな」という思いを、どうしても忘れてしまいがちです。その顧客視点に気づくためには、今回お話させていただいたような「顧客の生の声」を聞く取り組みを意識的につくることが重要だと思っています。むしろ、常に顧客視点を取り戻すためにやっているとも言えるかも知れません。

藤崎:なるほど。

塩谷:パラドックスのようですが、「顧客視点とはなんぞや」と企業側が考え出したとたん、それは企業視点になってしまうと思うのです。「私たちが考える顧客視点はですね…」といって、それは本当に顧客視点になっているのかという問題です。その意味で完全にフラットに考えることができないと、顧客視点に立つことはできません。企業の都合と顧客の視点とのギャップを常に埋め続けるのが重要だと思います。

藤崎:社長がタウンミーティングを続けているのも、その一環というわけですね。

塩谷:その通りです。できることをひとつずつ、実践して行こうという取り組みです。

最後になりますが、日本の当社で働く従業員はアルバイトも含めて約3万人いて、実はその人たちも大切なお客さまです。私たちの店舗スタッフはケンタッキーが好きな人たちがたくさん働いています。彼らもお客さまと考えると、約3万人のスタッフの声も重要なのです。つまり人数が少ない本社だけで考えていてもわからないことがたくさんあります。そうした約3万人の従業員の生の声や率直な意見を吸い上げることも重要だと考えています。

一言で顧客視点と言っても、いくつかの切り口が考えられます。つまり、お客さま、ファン、従業員といった多様な声を集めていくことで、本当の意味での顧客視点を実現できるのではないかと考えています。

藤崎:貴重なお話、ありがとうございました。

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藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)
藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

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