プロモーション手法としてすっかり定着した感のある「コラボレーション」。協業する企業同士で互いのファンへアプローチし、新たな顧客をつかむきっかけとなります。商品やサービスに新鮮さをもたらし、既存客のロイヤルティを高める効果も期待できそうです。こうした成果を勝ち取るためには、どんな点に注意すればいいでしょうか。
今回の特集では、さまざまなコラボレーションを取材しました。実現に至るプロセスをたどることで、成功の要因を導き出します。
出店ブランドの幅の広さ 先入観を打ち砕く
「ラフォーレ原宿」(東京・渋谷)は11月19日まで、「コカ・コーラ」とのコラボレーションとして、「Coca-Cola Collection in Laforet HARAJUKU」と銘打った企画をスタートした。
期間は11月19日まで。同館に出店する22ブランドが参加し、「コカ・コーラ」のロゴなどをモチーフにした限定商品を用意した。使用した素材は現行のものに限らず、往年のデザインも。商品も、洋服のほかアクセサリーや雑貨などバリエーションを豊富に揃えた。
年に2回、春と秋に限定商品企画を実施するのが、近年の「ラフォーレ原宿」では通例となっている。「コカ・コーラ」とのコラボ企画は、以前から提案を続けていたが、「ようやくタイミングが合い、企画がまとまりました」とラフォーレ原宿のプロモーション担当副主事の野口快氏は話す。
「『ラフォーレ原宿』は若い女性のお客さまが多いというイメージがあるかと思います。しかし実際は、年齢や性別・国籍を問わず、幅広い層に来館いただきたいと考え、メンズ・ユニセックスの打ち出しを強化したり、2015年には飲食エリア『グッド・ミール・マーケット』をオープンしたりしています」
とくにことし4月には、キャンペーンビジュアルに俳優の浅野忠信さんと、浅野さんの長女でモデルのSUMIREさん、長男のHIMIさんを起用し、メンズやユニセックス商品の充実ぶりをアピールした。2016年秋時点でマッドストア アンダーカバーなどが旗艦店を出店、メンズ・ユニセックス商品を取り扱うブランド数は42に増えた。
「コカ・コーラ」とのコラボレーションも、年齢や性別を問わず、参加ブランドによるさまざまな切り口を楽しめる企画となり、ユニセックスな商品もいくつか目につく。
「当館の特徴は、カジュアルからデザイナーズまでさまざまなジャンルがひとつの場所に集まっていること。結果、コラボ企画でも多彩な商品をご用意できるのが来館者にとっても魅力だと思います」
参加を促し熱心に説明続ける
企画がスタートしたのは1年以上前。参加ブランド側が限定商品を制作するのに時間がかかるためだ。
実施前には、野口氏らから、各ブランドを集めた説明会、あるいは個別の機会を設け、企画趣旨などをプレゼンテーションする。
「当館としては、ご参加いただけるブランドが多いほうがいいとは考えています。もちろん、強制はできません。しかし、企画に参加することのメリットを知っていただけるよう、店舗に伺ってでもご説明します。はたから見て、時間がかかると言えばかかるのでしょうが、私は時間をかけて細かくご説明する意味があるし、しないと結局はありきたりな企画になると考えています。また、こちら側でも、キービジュアルやパンフレットに至るまで、企画段階で目指したものからブレが出ないよう、注意しなくてはいけません」(野口氏)
今回の「コカ・コーラ」の企画でも、初めて使用できる素材があり、これまでにない商品をつくるチャンスでもあった。一方、当然、参加ブランドにはリスクもある。商品開発・生産は投資であって、常に回収できるとは限らないからだ。
「だからこそ、ラフォーレ原宿としては、消費者やメディアに対するアプローチを行い、できるかぎりブランドにとってのメリットを強化したいと考えています。
最終的には、言葉を尽くすよりも、見ることで納得いただくこともあります。実際に期間中に大勢のお客様がいらっしゃるようすを目の当たりにされると、より満足していただけることが多いですね。
いずれにせよ、お客さまの数やそのご感想で効果を実証するわけですから、プランニングするときには、「日本初」や「過去最大級」「限定感」といった、ほかで前例のない企画にすることを意識しています」
買い物をするだけなら、手元のスマートフォンを通じて、便利にできるようになった現代、特定の場所に赴いてもらうハードルは、相対的に高まりつつある。
「たしかに実店舗は、昔と比べてむずかしい部分があるとは感じます。購入以前に、来ていただくだけでもむずかしいし、せっかく来ていただいても『何もない』と思われてはダメ。それだけに、何をすべきか、新しい機会にもなっているのではないでしょうか。
ファッションに対する支出はたしかに、下がる傾向にあります。ですが、そうした減少と、お客さまのファッションへの興味は相関していないと考えています。支出が減ったからと言って、興味まで失われるわけではない、ということです。だからこそ、より興味を持ってもらえる、そういうアイデアが必要です。
まだ、ラフォーレ原宿の魅力を伝えられていない層は多いかと思います。そうした方々に知っていただく上で、外部企業やコンテンツと協力し、従来とは異なる方向からのアプローチができる点で、コラボには意味があると思いますね」
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