ビジュアル×新規事業
小柴:続いてのテーマは、「ビジュアル×新規事業」です。アマナ ビジュアルコンサルティング・スーパーバイザーの片岡圭史さんからお話ししていただきます。
片岡:現在、大手企業の新規事業部やベンチャー企業の多くが、消費者への情報伝達に課題を抱えています。自分たちの事業に対して自信を持っているがゆえに、一方的なコミュニケーションになりがちで、強みがうまく伝えられないのです。これから紹介するのは、こうした課題をビジュアルで解決した事例です。
まずは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)との取り組みです。ご存知のように、JAXAは素晴らしい技術を持っています。しかし、世の中には「宇宙に関する技術は、自分たちに関係ない」と思っている人がほとんどではないでしょうか。その技術を、どう民間にプロットしていくかを共同で実施しました。
例えば、JAXAの衛星データを使って、絶対に衝突しない車をつくるといったアイデアが生まれたとします。しかし、それを言葉で共有しようとしても、人のイメージはそれぞれバラバラで共通認識を持つことは難しいでしょう。そこで、ビジュアル化することが求められたわけです。
別の例では、JAXAの持っている黒潮に関する数値データ。専門知識のない僕らが見ても理解できません。しかし、潮流をマッピングして動画にすると分かりやすくなり、理解できるようになります。これがデータをビジュアライズする技術「データ・ビジュアライゼーション」です。
ベンチャー企業のサウンドファンが開発した「ミライスピーカー」は、難聴者にも聞き取りやすい音を出すことができます。しかし、なぜ音が遠くまで、はっきり聞こえるのかという技術的な裏づけが人に伝わりにくく、誤解をさせてしまうことが課題でした。そこで、ミライスピーカーがどのように音を伝達できるのかというポイントをまとめたムービーを制作したところ、肝となる技術「曲面サウンド」に対する理解が得られるようになりました。
小柴:ここから学べるポイントは、「未知なるものを可視化すると、強力な共通言語になる」ということですね。人それぞれが違う解釈をしている技術を、ビジュアルとして定着させることで、意思統一が図れたり、関心を持たせたりできます。