アナログな「演出力」を磨いてきたディレクター陣
同社で手がけた代表的な事例として、ソニーのWeb動画「AROMASTIC ×又吉直樹『元、落語家』」がある。俳優の柄本佑さんが、落語家への夢を捨てた不動産営業の社員を演じ、お酒に酔うと流暢な噺を始めるという内容だ。企画・構成はお笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹さん。映画制作の実績なども踏まえ、「しっかりした脚本と演出ができるプロダクションに」と同社に声がかかった。
また、出演者の起用に当たっては、映画を手がけているディレクターがいることで信頼してもらえ、実現に至っている。「この作品は主役が元落語家という設定の話だったので、生半可なことはできないと思い本物の落語家さんをお呼びして事前に指導をしてもらい、徹底的に勉強してから臨みました。この作品に限らず、演出するための下調べは大事にしています」と志真さんは明かす。純粋に映像作品を作ってきた映画監督としての経験が、他社やタレントから評価を得る「演出力」につながっている。
同社のディレクター陣は、映像編集の技術やツールが発達する中で、“アナログな演出力”を意識し磨いているという。「アフターエフェクトなどに関しては社内にエディターやデザイナーがいるので、僕らはストーリーを立てて、カメラの前で撮りたい瞬間を実現することにより重点を置いています。出演する役者さんのよさをどう引き出すといいのか、シーンの臨場感を出すにはどうするのがいいのかを常に考えています」と志真さんは言う。自主映画を制作していた頃から、企画力や演出力に焦点を当ててスキルを磨いている。
そうした演出力は、Web動画でも生きてくるという。「最後まで見てもらうために、『3 分以内で』など、尺の指定があることがあります。ただ、ストーリーに合わせてしっかり面白い映像になっていれば、映画のように飽きずに見てもらえると思います。そうした映像を作ることを念頭に置いて取り組んでいます」(山田さん)。
いまではCMやMVの制作も数多く手がける同社だが、映画やドラマの監督をする藤井道人さんなど、それぞれが得意分野で活躍しており、BABEL LABELとして映画を作ることも目標のひとつ。1 人ひとりが自らの求める映像表現に対して、その分野で新たなカルチャーを生み出そうと挑戦を続ける。その集合体が現在のBABEL LABELになっている。
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